「細マッチョ・ゴリマッチョ」:サントリーの戦略を読み解く

2009.04.10

営業・マーケティング

「細マッチョ・ゴリマッチョ」:サントリーの戦略を読み解く

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

2009年03月17日新発売のプロテインウォーター。CMは1975年代の大ヒット曲ヴァン・マッコイ&ソウル・シティ・シンフォニーの「ハッスル」に合わせて松田翔太と中村獅童が軽妙な動きで新しい「細マッチョ」の魅力を訴える。そのサントリーの戦略とは?

新商品「プロテインウォーター」はサントリーのソフトドリンクの中にある機能性飲料カテゴリーに属し、さらに「LIFE PARTNER」ブランドを冠した戦略商品だ。「LIFE PARTNER」ブランドの旗艦商品は「DAKARA」。2000年にスポーツ飲料カテゴリーに大塚製薬のポカリスェット、日本コカ・コーラのアクエリアスを追撃すべく市場に投入された商品だ。
DAKARAの戦略は、一橋大名誉教授の野中郁次郎先生の著書「イノベーションの本質」で一番目の事例として取り上げられているほど秀逸なものであった。サントリーは先行商品が「水分の体内への吸収の良さ」をセールスポイントとしており、後発商品では同じポジショニングでは勝てないと判断した。それ故、独自のポジショニングである「老廃物の排出」を訴求したのだ。
DAKARAの一番最初のCMを覚えているだろうか。小便小僧である。小便小僧は何をしているかといえば、オシッコをしている。つまり「排出」。それまでの水分の「吸収」をひたすら訴求していた先行商品に対して明確な差別化を図ったのである。そして、ネーミングはカラダと引っかけてダカラとし、真っ白なボトル缶に赤いハートを記してメディカルなイメージを演出した。メディカルを訴求するため、街頭サンプリングにもナース姿のキャンペーンガールを用いて話題になった。

そのDAKARAの赤いハートの周りに書かれている言葉が「LIFE PARTNER」。現在、同じ名を冠している商品は「ビタミンウォーター」と「プロテインウォーター」である。
LIFE PARTNERはサントリーのホームページなどには明確なブランド定義がなされていない。しかし、消費者は、LIFE PARTNERといえばDAKARAと認識している。商品を扱っている社外のECサイトや個人ブログではビタミンウォーターとプロテインウォーターを「ダカラ・ビタミンウォーター」「ダカラ・プロテインウォーター」と表記していることが多い。正確にはDAKARA傘下の商品ではないので、ある意味、勘違いともいえるのだがそれこそがサントリーの戦略だといえる。

ビタミンウォーターはビタミンC、ビタミンB6、ローヤルゼリーの摂取ができることを訴求している。今回のプロテインウォーターはプロテインの摂取だ。DAKARAは「排出」を訴求する。そして同じLIFE PARTNERを冠した商品は、「余分なものを排出したら、欲しいものを取り込もう」というメッセージを発信しているのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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