ビジョナリーハンドブック(4):規模のパラドックス

2009.01.09

経営・マネジメント

ビジョナリーハンドブック(4):規模のパラドックス

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

“蝶のように舞い、蜂のように刺す”  - Float like a butterfly, sting like a bee - これは、米国ヘビー級プロボクシングにおける 往年のチャンピオン、 モハメド・アリ の言葉として有名ですよね。

モハメド・アリは、
ヘビー級の相手をKOできる強烈なパワーと同時に、
華麗なフットワークを持っていました。

従来の力任せに殴りかかるだけの他のヘビー級ボクサー
とは一線を画した、このボクシングスタイルによって、
彼は19度もの王座防衛に成功したわけです。

ビジョナリーハンドブックでは、
現代の企業経営の理想的な在り方として、
冒頭のモハメド・アリの比喩ほど適切なものはない
と述べています。

企業は大きくなればなるほど、
できるだけ小さくなるべきであるのです。

ここで「小さくなる」というのは、
そうすることで、環境変化に対してより敏感になり、
また俊敏な動きが可能になるということを意味しています。

特に、マスマーケットが細分化され、いわゆる

「マイクロマーケット」

が多数出現している現代において、
全体としての規模は大きくとも、活動単位としての組織の
大きさは可能な限り小さく構成されるべきでしょう。

この点について、同書では別の面白い比喩を示しています。

それは、大企業の組織は、

「チキンナゲットモデル」

を採用すべきであるということです。

チキンナゲットのような一口サイズまで、
組織を細分化せよということですね。

もし、チキンナゲットモデルの採用が難しい場合、
大企業は鈍重な恐竜のまま止まり、環境の急激な変化に
あっけなく滅びてしまう可能性が高くなるからです。

一方、規模の小さい企業は、
対外的にはより大きく見える必要があります。

ここで大きく見えるというのは、
たとえ小さくとも、業務を最初から終わりまできちんと
完結できるという仕組みを確立しており、顧客として
信頼を寄せることができるということを意味しています。

ですから、小企業の運営は、

「ローストチキンモデル」

を採用しなければなりません。

丸ごと1体の企業として見えるということですね。

このため、組織運営としては、

「万能」

に近いものを求められます。

起業したての会社を想像してもらえればいいのですが、
多くの場合、生産、マーケティング、財務、物流等、
多岐にわたる企業の機能をしばしば一つの組織や人で
こなさなければならないのです。

また、小企業はより外部の環境変化の影響を
受けやすいため、保守的になることは許されません。

積極的に変化を受け止めると同時に、
こちらからも大胆な挑戦をしかけていくことも
必要となります。

このことはとても厳しい試練ですが、
この状況を乗り越えられるかどうかが、
成長の鍵を握っていますよね。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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