派遣切り「2009年問題」・事務職は大丈夫か?

2008.12.16

経営・マネジメント

派遣切り「2009年問題」・事務職は大丈夫か?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

熟練労働者の大量定年を迎えるにあたり、いかに技術伝承をするかということがテーマとなった2007年問題の話ではない。景気後退に際して派遣社員の計画期間満了に伴って、契約を大量の実質的失業者が出るという問題だ。しかし、それは製造業の現場だけではなく、事務職のサポートを行う派遣社員にも飛び火しているという現実がある。

その、ある意味「熟練派遣労働者」が、今日の景気後退に伴う経費削減という企業の防衛策で切り捨てられようとしている。しかし、それはあまりにも浅薄な選択肢ではないかと筆者は思うのである。
筆者の専門領域であるナレッジマネジメントの観点から指摘してみたい。

前述の通り、事務サポートを行っている派遣労働者は、正社員の陰となり、様々な業務をこなしてきた。そして、その多くは「マニュアル」や「手順書」などに記されていない(そもそも、ホワイトカラーの業務にはそうしたものが存在していないことが多いのだが)業務である。そして、派遣社員が辞める時には、正社員の知らぬところで派遣社員同士で簡単なメモと口伝で引き継ぎが行われる。数日間、派遣社員同士でOJTという形での引き継ぎが行われる例もあるようだ。そこで、暗黙的なナレッジの継承が行われているのである。

2007年問題における熟練労働者のナレッジ継承はどのようにおこなわれてきたのだろうか。企業によって様々であるが、筆者は米国において開発された「シャドウイング」という手法を提唱し、同様な手法をとった企業も多かったと聞く。

バックナンバー:<毎日新聞社「週刊エコノミスト」2007年問題特集>
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2005/07/2007_cb00.html

端的に言えば、熟練労働者の技術を伝承するためにアナリスト張り付いて、熟練の技を観察し、一挙手一投足を余すところなく記録し、分析し、形式知化するとという手法である。

このように、2007年問題においては極めて慎重に行われてきた「暗黙知の伝承」が、今回の2009年問題においては、極めて短絡的に契約延長をしない、つまり実質的な解雇というだけの、突然の断絶という現象を引き起こしている。
「暗黙知の伝承」が全くなされる気配がない。その根底には、「派遣社員が抱えている暗黙知などたかがしれている」という驕りがないだろうか。しかし、派遣社員は陰の存在として、様々なサポートをしてきた事実は無視できないはずだ。しかし、突然の実質的解雇では、正社員への引き継ぎが十分になされる気配もない。また、なされたとしてもかなり形式的なものに留まっているように見える。

ホワイトカラーのパートナーであり、サポート役である派遣社員、または契約社員も含まれるが、その「暗黙知」を軽視しない方がいい。
筆者として2009年を予想すると、この問題によって、ただでさえ生産性が低いと指摘される日本のホワイトカラーの生産性はさらに低下するだろう。低下だけではなく、混乱を来すかもしれない。
対策は、派遣社員や契約社員を切らないことだ。しかしながら、経費削減をどうしても行わなくてはならないのであれば、引き継ぐべき正社員に対して、引き継ぎを十分な期間を取って行うことである。そうすることによって、企業としては暗黙的なナレッジを含めた業務プロセスの逸失が防ぐことができるし、派遣社員・契約社員も新たな雇用先を探す猶予期間を得ることができる。
もしそれがなされなければ、2009年は景気後退の進行に加えて、職場の混乱という大きな問題が発生すると考えられるのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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