公益財団がプリウスをテアダウンするのは正しいのか?

2010.05.26

経営・マネジメント

公益財団がプリウスをテアダウンするのは正しいのか?

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

ある公益財団の協力により、日経BP社よりプリウスの分解レポートが今月末に発刊されます。 内容的には非常に興味深いものなのですが、本当に他人が一所懸命に培ったあらゆるイノベーションやナレッジを解き明かし、公にすることが公益なのでしょうか?

日経BP社より「最新型車分解レポート2010 トヨタ自動車『プリウス』」というプリウスの分解レポートが今月末に発刊されます。ハイブリッドシステム、高電圧の配線、軽量化のための車体部品などについて、写真や図版などを交え詳述するとのことで、内容的には非常に興味深いものです。

しかし、もろ手を挙げてお勧めするかというと、どうもしっくりこない点があります。こうした動きは、イノベーションやナレッジの創造をすぐに陳腐化させ、中長期的には、それらへの投資の意欲を失わせ、反対に妨げになるのではないかという点です。

テアダウン、リバースエンジニアリングを行なう事自体は、今のところ法的には問題ありません。しかし、それは、先日iPadのテアダウンレポートにまつわるお話をさせて頂いたように、こうしたテアダウンの結果レポートが広く出回るという事態を想定していなかっただけで、法整備の方が遅れているのではないかと考えられます。

出版物に例えるなら、テアダウンレポートは、「この本の構成はこうなっています。タイトルはこうつけられていて、内容はこうなっています。」という書き方で、中身は全文引用で記事を書くようなものです。自分達の著作権にはうるさい出版社が、他人の知財になるとその権利保護に無頓着というのは、特に日経BPのような大手出版社のやる事か疑問に感じます。

また、本レポートの作成には、ひろしま産業振興機構カーエレクトロニクス推進センターという公益財団が協力しています。地域産業の振興という点はありますが、果たして、ここまで来ると、本当にそれが公益かという点にも疑問があります。この活動に携わっている方々すれば、地域産業の振興という目の前の目的に一所懸命のことなのかもしれませんが、今回の件は、よくある合成の誤謬の例ではないかと思われます。

ここ20年余り続いている日本の現在の閉塞感は、日本にイノベーションが不足していることが一つの大きな要因です。公益という観点からは、短期的な利益の追求により、イノベーションの種を踏み散らかすようなことをするよりも、イノベーションやナレッジの創造が報われる方向での政策誘導をすべきだと考えられます。

少し話が大きくなりすぎました。調達・購買の現場の話に戻りましょう。

調達・購買の現場で今回の話と似たようなケースとしては、VA提案やRFPでのサプライヤからの提案の扱いがあります。サプライヤから上がってきた提案を、そのまま大手や既存取引先に見せ、「お宅でこれと同じものをもっと安くできない」ということをしていませんか?

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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