「縮む市場」に「消費者」はいない

2008.09.16

営業・マーケティング

「縮む市場」に「消費者」はいない

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

世界的な各種原材料の高騰に圧迫され、企業の業績は低迷。金融不安が拍車をかける。労働配分率も高まらず、生活防衛のため家計の引き締めが加速。そして企業は「モノが売れない」と嘆く悪循環。 出口が見えない日本経済の失速の中、消費市場は縮んでいく。

縮む市場の中で、企業はいかにして生き残りを図ることができるのか。環境の変化に対する生き残りは、生物の歴史から学ぶこともできる。
例えば、氷河期への突入によって、恐竜が絶滅し、ほ乳類が生き残って進化したという認識が一般になされている。しかし、実際には多くの恐竜は絶滅したが、生き残った種類もあり、絶滅したほ乳類もある。ちなみに、生き残って進化した恐竜の代表格は鳥類の先祖であり、今日では両者の系譜が証明されている。話を戻すが、絶滅と生き残りを分けたのは単なる種の違いではない。環境に適応できたか否かである。

環境が変化し食料が枯渇することは、生物にとって死を意味する。「モノが売れない」と嘆くのは、「食料がない」と言うのと同じだ。嘆いても食料は自分からやってこない。
温暖な白亜紀には草食恐竜はどこででもシダ類などの食料にありつけた。肉食恐竜も安定して獲物にありつける。高度成長期の大量生産、大量消費の「作れば売れる」はそうした環境であったと思えばいい。その後、時代は変化した。消費の高度化による差別化とパイの食い合いという競争の激化や、バブル崩壊後の顧客囲い込みによる生き残り競争など、その時々の環境変化をとらえ適応できた企業が生き残り成長したのだといえる。
しかし、サブプライム問題に端を発した今日の景気の激変は、そのインパクトの大きさと影響範囲を例えるなら、恐竜絶滅の原因という説もある小惑星の衝突に例えるべき程のものだといえるだろう。

想像を超える環境の激変に対し、速効策などないのだろう。できることは小さなことの積み重ねかもしれない。しかし、氷河期に食料を探し出すが如く、ほんの少しのチャンスも見逃さず、無駄にしない。そして、自らチャンスを作り出す努力が欠かせないのである。
そんな今日の環境下で、注目に値する取り組みが新聞で紹介されていた。

日経MJ9月15日9面<日本トイザらス 店員呼び出しボタン設置 自転車・ベビーカー売り場 客の相談に即応 販売機会ロス減>との見出し。
<顧客が販売員と相談しながら選ぶことが多い商品のため、販売員がいないと販売機会の損失につながると判断した。顧客が自分で商品を選ぶセルフ方式による低価格販売で成長してきた同社だが、販売機会の低迷を受け戦略を転換。接客サービスの改善に力を注ぐ>とある。
販売の現場まで顧客を連れてきて、買う気にさせるということは、消費者の心理変容モデルである「AIDMA(Attention・Interest・Desire・Memory・Action)」を最初のAから最後のAまで進めたということだ。そこに至るまで、いかほどのコストが投下されたことか。また、AIDMAが進まずに、店頭までこなかった消費者がどれくらいいることか。それを、最後の段階で購入棄却させてしまうということは、目の前の食料を看過して飢えるのと同じだ。あまりに単純で既に改善しておくべきだったのではと指摘するのは簡単だが、家電量販店などでも同様に、相談できないが故に購入を見送るケースは散見される。特に、古くなっても完全に壊れていない限り使うことのできる白物家電などは顕著だ。現に筆者自身がいくつかの商品で購入の見送りをした経験を持っている。単純なのではなく、自社のビジネスモデルを組み替えてでも、このようなポイントに適確に対処したトイザらスを賞賛すべきだろう。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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