携帯電話販売台数2割減

 携帯電話各社の2009年度第1四半期決算(4~6月期)が揃いました。各社の携帯電話販売台数が軒並み前年同期比で20%前後減少しています。

 S社は8月5日に開いた2009年度第1四半期決算説明の席で、7月11日に発売したばかりのiPhoneの通信プランを20,175パケットまでは月額1,695円、71,250パケット以上は月額5,985円の2段階定額制に改定することを発表しました。

 安い料金を新設したのはライトユーザーを惹きつけるだけではありません。ユーザー数が増えても安い料金以内で留める人が増えれば、トラフィック負荷の抑制につながり、その分さらにユーザー数を増やすことができます。S社の巧妙な戦略とスピード感には驚かされます。

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 S社はADSLの激安販売でブロードバンドのリーディングカンパニーとなりました。2007年12月末時点でADSLのシェアは37.6%、NTT東西の37.1%を初めて上回りトップです。しかし、次世代のFTTH(光ファイバ)のシェアでは、NTT東西が71.4%で競合他社を圧倒しています。(総務省調べ)

 S社がFTTHでもシェアをとることは、ほぼ不可能でしょうし、そもそも、S社にFTTHで積極攻勢する気配は全くありません。

 普通なら、「S社はADSLで一世を風靡した過去の企業」と呼ばれてもおかしくないのかもしれません。しかし、S社をそのように揶揄する人はいません。

 S社がシェアの取れない有線ブロードバンドに見切りをつけ、無線(モバイル)ブロードバンドに大きく戦略転換しました。今では、S社のADSLのシェアを気に掛ける人はいないでしょう。

 S社が国内最大規模の買収によって携帯事業に参入した背景は、必然の選択によるものといえます。

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 私はS社の携帯電話を持っていません。今後もおそらく、S社の端末を使うことはないと思います。S社に肩入れするつもりは毛頭ありませんが、D社やK社の戦略展開はS社に比べれば半年遅い感がします。

 もし半年後に、S社のiPhone人気に追随する形で、受け売りの戦略でD社がiPhoneを販売するようなことになったら、2社の結果は全く違うものになるでしょう。

 新たな収益源を求める創造力に優れているのは、D社なのか、K社なのか、S社なのか・・・。S社のトップのスピードと実行力は現場が混乱する弊害もありますが、それを上回るベネフィットが少しずつ見えてきたように思います。

 なお、ここでは言及しませんでしたが、携帯の普及率9割を超える時代に、端末メーカーや販売店も従前のやり方で利益を出し続けることはできません。ビジネス戦略の転換が求められるのは、携帯電話会社だけでなく、端末メーカーや販売店も同様であることはマスコミなどが指摘する通りです。

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