京都花街の経営学(2)芸舞妓さんのキャリア中編

2008.07.02

ライフ・ソーシャル

京都花街の経営学(2)芸舞妓さんのキャリア中編

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

舞妓を目指す女性は、 多くは中学卒業後に「置屋」に住み込み、 約1年間にわたる集中的なトレーニングを受けます。 「置屋」とは、タレント事務所のような存在です。 経営者は基本女性です。「お母さん」と呼ばれます。 つまり、舞妓さんとは擬似的な親子関係を結ぶわけです。

舞妓さんがデビューする時は、
特定の先輩芸舞妓さんと盃を交わします。
擬似的な姉妹関係を結ぶのです。

「盃の姉」と呼ばれる先輩芸舞妓のお姉さんは、
自分の妹的な存在となった新人舞妓さんの面倒を
とことんみます。

自腹を切ってあちこち連れて行きますし、
舞妓さんがお座敷で何かミスをしたりすると、
一緒にお茶屋に頭を下げに行ってくれるのだそうです。

最近、企業で採用されることも増えてきた

「メンター」

的な役割を果たしているのが「盃の姉」なんですね。

企業内のメンターもそうですが、
盃の姉さんは、後輩の舞妓さんの面倒を見ることに
対してなんらかの報酬をもらえるわけではありません。

一方で、企業内メンターよりも、
はるかに大きな責任を感じ、自分のお金と時間を
たっぷりと投じて、後輩舞妓さんの支援を行うのです。

なぜそこまでやるのでしょうか?

一つにはそうすることが花街の伝統だから、
ということもあります。花街全体が運命共同体として
お互いに助け合うという考え方が根付いているのです。

また、置屋のお母さんと同じく、
将来のための投資行動でもあります。

例えば、お座敷には通常数人の芸舞妓さんが
呼ばれますが、自分の息のかかった後輩であれば、
チームワークが組みやすいですね。

先輩の芸妓ともなれば、
お座敷の状況に応じて複数の後輩芸舞妓さんの
役割分担を適切に指示することも求められます。

そうしたお座敷での差配のうまさも、
芸妓としての高い評価につながるのです。

また将来、自分でお茶屋を経営することにした場合、
面倒を見た芸舞妓さんであればなにかと融通が効くから
なのです。

→夕学五十講 西尾久美子氏講演(08/06/16) 受講生レポート

『京都花街の経営学』
(西尾久美子著、東洋経済新報社)
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これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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