なぜ、他社に勝っても事業が伸びないのか― モノ・価格・効率の競争が限界を迎えた本当の理由

2026.04.06

経営・マネジメント

なぜ、他社に勝っても事業が伸びないのか― モノ・価格・効率の競争が限界を迎えた本当の理由

松井 拓己
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

「やるべきことは、すべてやっているはずなのに、なぜか手応えがない。」 売上向上のために新たな施策を打ち、顧客満足度を高めるための改善を積み重ねる。現場は以前よりも確実に忙しくなっている。それにもかかわらず、成長しているという実感が持てず、次の一手も見えてこない。 今、こうした閉塞感は特定の業界に限った話ではありません。製造業、IT、金融、流通、そしてB2B・B2Cの別を問わず、あらゆる領域から同じような声が聞こえてきます。実は、現代の多くの企業は、個々の能力の問題ではなく、「努力が報われにくい構造」の中に閉じ込められているのです。

立ち止まって問い直すべき「戦っている土俵」

こうした停滞感に直面したとき、多くの企業は反射的に次のような対策を講じがちです。

• 競合に対抗するための価格の見直し

• 機能やサービス内容の際限なき追加

• スピードや効率のさらなる追求

• 現場にさらなる負荷をかけての改善活動

もちろん、これらはいずれもビジネスを維持する上で必要な取り組みです。しかし、これらを愚直に実行してもなお、現場に苦しさが残るのはなぜでしょうか。理由は極めてシンプルです。ほとんどの企業が、同じ土俵で戦い続けているからに他なりません。

顧客から「比較されること」が前提となっている市場、そして製品やサービスの違いが分かりにくくなった成熟市場において、改善を重ねれば重ねるほど、結果として競合他社と「横並び」になっていく。そのような競争環境下では、どれほど懸命に努力をしても、その優位性が長く続くことはないのです。

見えない消耗戦

「それはモノを売るビジネスの話ではないか」と思われるかもしれません。しかし、同様の構造的な課題はサービス業においても顕著に現れています。

提供内容は各社で少しずつ異なっているはずなのに、顧客の視点からはどれも同じように見えてしまう。その結果、常に価格や条件の比較にさらされ、自社が選ばれる理由が弱くなっていく。受注や契約のたびに、担当者は毎回多大な労力をかけて説明と説得を繰り返さなければならず、期待したほどリピートや継続利用も伸びない。

サービスの価値は「体験」や「関係性」にあるはずです。それにもかかわらず、現実にはスペック・条件・価格という、モノ売りに近い競争軸に引き戻されてしまう。これは決してサービス業が未熟だからではありません。価値の扱い方が、依然として「競争前提」のままになっているからなのです。

「他社に勝つ」時代の終焉

これまで、多くの日本企業は「現場の工夫」「担当者の経験」「個人の対応力」という、いわゆる「現場力」によって競争を勝ち抜いてきました。しかし、その成功体験の裏側では、いくつかの深刻な副作用も生まれています。

特定の優秀な個人に過度に依存し、その成功が組織として再現されない。また、個々の対応が場当たり的になるため、組織としての学習が進まないといった問題です。市場全体が成熟しきった現在、単なる「努力」そのものが差別化の要因になりにくくなっています。他社と競っている企業ほど、その努力が報われずに疲弊していく。これは今の日本企業において、決して珍しい光景ではありません。

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松井 拓己

サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。              【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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