顧客はパートナー、共演者、上司、監督、スポンサー【2】

2008.06.05

仕事術

顧客はパートナー、共演者、上司、監督、スポンサー【2】

猪熊 篤史

パートナー、共演者、上司、監督、スポンサーとしてのお客様について引き続き考えてみたい。

純粋な空腹の充足や味や見た目の良さを求める顧客ではなく「安全で安心な食べ物で空腹を満たす」という健康や食の安全・安心に対する志向が強い顧客にとって、有機野菜は顕在的な欲求に結びつきやすいであろう。

製品の基本形も重要である。例えば、「きゅうり」だというのにトマトのような形をしていたり、緑色ではなく、赤ければ、特別な理由がない限り、顧客には受け入れられないだろう。顧客は、経験や学習、既存の価値観に基づいて、自分の感覚にあったものを選択する。

また、顧客の期待に適切に応える必要もある。「安全で安心な食べ物で空腹を満たすこと」を目的として、一般的な見た目や形の野菜を求める顧客は、値段が通常の2倍、3倍であったら恐らく有機野菜を買わないだろう。何時もの価格帯の野菜を顧客は期待するものである。また、親切な店員のサービスを期待する顧客にとって、店員の態度や対応が不親切であれば、買い物をせずに店から立ち去る顧客もいるであろう。経験や学習、既存の価値観に基づいて形成される顧客の期待を適切に満たさなければならない。

対象顧客の目的(便益)、経験、学習、価値観などを大きく外さない製品・サービスの基本形、そして顧客の期待に適切に応えることが潜在的欲求を顕在的な欲求にするために重要である。

創造力の働かせ過ぎはビジネスにおいて失敗につながることが多いだろう。絵画など芸術は別かも知れないが、ビジネスでは顧客に商品の解釈を委ねることは通常ない。(結果として、顧客が新しい価値を見出すことはあるだろう。)ピカソの絵のような創造的な製品であっても、人なら人、馬なら馬と、顧客に理解出来る範囲でなければ商品にならない。

顧客の顕在的欲求の満たし合いから、不毛な潜在的欲求の満たし合い、そして、潜在的欲求を顕在的欲求に変える競争に発展しがちな企業競争において、顧客の目的(便益)の把握、顧客の経験、学習、価値観などを大きく外さない製品・サービスの提供、そして、顧客にとってのコスト効率の実現(顧客にとっての『安さ』の提供)が不可欠である。

その先は、コミュニケーションの問題となるだろう。 (次回に続く)

【V.スピリット No.38より】

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