仕事の報酬

2008.05.26

ライフ・ソーシャル

仕事の報酬

猪熊 篤史

金銭的な仕事の報酬とは別の報酬がある。非金銭的な報酬について考えてみたい。

2002年にワイルドベアコーポレーションを創業する前に、ソフィアバンク代表の田坂広志先生の塾で数ヶ月間勉強させて頂いた。ビジネス知識や能力、ノウハウの習得を期待して入塾したのだが、田坂先生から学んだのは心構えや思想だった。アメリカのビジネス・スクールでは決して学べない日本的、東洋的な思考や思想をがとても新鮮だった。アメリカで学んだビジネス知識やスキルを仕事に活かすための心の準備として、また、ビジョンやミッションを具体化するために役立つた。

「仕事の報酬とは何か?」と聞かれれば、現実的には給料やボーナスということになるだろう。しかし、田坂先生から教えて頂いた仕事の報酬は、能力であり、仕事自体であり、成長であった。これは良い考え方だと思う。そのような心構えがあれば職場における人間関係も円滑になり、仕事も上手くいきやすいだろう。

現在の自分の仕事に照らし合わせて「仕事の報酬」について改めて考えてみると、仕事の報酬は知識や能力、あるいは、仕事自体だと気づく。取引先やパートナーとの関係においても仕事の報酬として仕事自体、あるいは知識や能力を習得する機会としての魅力を見出して頂けない人々とは仕事が出来ない。

仕事のスタンスやスタイルなど相性もあるだろう。支払う金銭的な報酬以上の価値を見出して頂ける方としか仕事は出来ないし、仕事をしてはいけないのだろう。金銭的な報酬以上の付加価値を見出して頂ける方、同じ労力に対してより大きな成果を出して頂ける方としか付き合えない。金銭的な報酬は、重要だが、金銭的な報酬のみを目的とする方とは付き合えない。

仕事を引き受ける側、お客様にサービスを提供する側として考えると、お客様の期待する成果を低価格で実現するか、期待を上回るような成果を上げられなければ仕事は受注できないし、受注すべきではないだろう。お客様に対するサービス提供の過程において、金銭的な報酬以上のものを見出せない仕事は良い仕事ではない。良い成果も期待し難いだろう。自分自身(自社)の成長にもつながらないし、何よりもお客様のためにもならない。

小さな組織では人材や資金など経営資源が限られる代わりに、利害対立などの障害は少ないはずである。専門家やコンサルタントに相談することは時間的にも、費用的にも困難になる。経営者の判断の優劣が業績に重大な影響を及ぼす。

顧客、取引先、社員、株主など利害関係者に対して、いかに多くの非金銭的な報酬を提供できるかが組織の発展や存続のための決めてになる。

非金銭的な報酬とは、安心、信用、信頼、学習、成長、新たな仕事、生活の質、あるいは、それらに対する期待や可能性などである。

顧客、取引先、社員に対して提供する非金銭的な価値の合計が広い意味での利益になる。社員は、自分の生み出した価値の一部を報酬として受け取る。株主や経営者は総合的な経営活動の結果生み出された利益を原資として、配当や賞与を受け、株価の値上がりによる資産効果を享受する。あるいは、名声や社会的地位などの形で非金銭的な報酬を受けることになる。

【V.スピリット No.26より】

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