もし、これまでの成果が個人の経験やセンスに頼る「属人化」で成り立っているなら、それは限界を迎えています。あるいは、「成熟」して、成長が高止まりしていることでしょう。今こそ、その属人化を打破し、ビジネスの成長(あるいは再成長)をドライブできる「価値の設計図」という新しい羅針盤が必要です。
実践!属人化を組織の力に変える「3ステップ」
個人のセンスではなく、組織の力で価値の再現性を高めるための土台作り、すなわち「リ・プロデュース」から始めましょう。この初期段階で、現在応えられている事前期待を整理し、「価値の設計図」をモデル化します。
このプロセスは、難解なものではなく、「サクッと活用すれば成果が出る」ことを重視した「ファスト・サイエンス」の精神で進められます。まずは次の3ステップで「事前期待の的」を描いてみましょう。
【ステップ 1】分類軸を挙げよう
顧客が商品やサービスを利用する前に漠然と抱いている「こんな風だったらいいな」という願望(事前期待)を、思いつく限り洗い出します。
例えば、「迅速に対応してほしい ↔ 丁寧に対応してほしい」、「なるべく安く済ませたい ↔ 納得できれば高くても良い」。このように、対立する概念で表現すると、議論が深まりやすいです。10分もあれば15~30個はリストアップできるはずです。
【ステップ 2】候補の中から3本選ぼう
リストアップした多数の候補から、「これだけは外せない」という軸を勇気をもって「3本」に厳選します。この絞り込み作業こそが、「何に注力すべきか」を明確にするための、熱い議論のきっかけになります。
【ステップ 3】的を見定めよう
選んだ3本の軸で区切られた8つの事前期待タイプのうち、的(ターゲット)とするタイプを3つ前後に絞り込み、◎や〇を付けます。
ただしここで、 「すべてのお客様を満足させたい!」と、すべてのエリアに〇を付けてはいけません。現場がパンクし、結局「絵に描いた餅」に終わってしまいます。的を絞ることで、現場のメンバーは「何をすべきか」が明確になり、属人的な努力ではなく組織的な再現性が生まれます。
「無難の壁」を突破し、設計図を磨き上げろ
いざ設計図を完成させても、「なんかピンとこない」「間違ってはいないけれど、イマイチ無難だ」と感じることがあります。これが、成果に直結しない設計図を生み出す「無難の壁」です。
この壁の原因の多くは、「失点撲滅の思考」にあります。クレームや不満をなくすことに焦点を当てると、結果的に「当たり前の期待」に応えるための設計図にしかなりません。また、「現状の説明にしかなっていない」、「提供者(会社)の都合でしか顧客を捉えられていない」場合も無難なものになります。
無難の壁を突破し、設計図をブラッシュアップする思考のヒントの一部を挙げておきます。
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
2023.03.13
2023.04.03
2023.03.27
2023.03.20
2023.04.10
2023.04.17
2023.04.21
2023.05.05
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)
サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新
フォローして松井 拓己の新着記事を受け取る