かつて、社会で求められる人間像は明確だった。 言われたことを、正確に、素早く、失敗なくこなす人。 知識を多く持ち、スキルに優れ、論理的に物事を処理できる人。 いわば“役に立つ人”こそが、価値ある存在とされてきた。 けれど、今、その前提が根底から覆されようとしている。 ――AIの登場である。 AIはもはや、単なる計算ツールではない。 膨大な知識を持ち、複雑な問題を論理的に解き、精度高く翻訳や文章生成を行う。 「知っていること」や「できること」では、人間はすでにAIに勝てない領域が出てきた。 この変化は、人類にある問いを突きつけている。 “では、人間にしかできないこととは何か?”
「自分って、何を目指して生きているんだろう?」
「どうせ働くなら、どんな自分でいたい?」
そんな問いを一度でも真剣に考えた人は、たとえ今は迷っていても、確実に深みがある。
そして、その深みこそが、未来で多くの人に必要とされる“灯り”となる。
■ リーダーこそ「在り方」で空気を支配する
リーダーには、影響力がある。
それは時に、言葉を超えて空気を支配する。
たとえば、職場の雰囲気がどこかギスギスしているとき。
メンバーの問題のようでいて、実はリーダーの在り方が影響していることが多い。
・余裕がないとき、ピリピリした空気になる
・信頼していないとき、管理が強くなる
・不安なとき、責任を押しつけがちになる
逆に、どんな状況でも、
・メンバーを信じて任せる
・困っている人の隣に立つ
・自分の感情を丁寧に扱う
そうしたリーダーの在り方が、
組織の空気を整え、信頼を育み、成果を生む下地となっていく。
■ “人間であること”を取り戻す時代
AIやロボットは進化する。
スキルは代替され、情報はコピーされる。
でも、在り方は人間にしか宿らない。
そして、在り方は「今この瞬間」の選択によって育てられていく。
どんな言葉を使うか。どんな姿勢で向き合うか。
何を見つめ、何に背を向けるか。
それらすべてが、今日のあなたの“人格”を形づくっている。
この本が伝えたいのは、“スキルの次の時代”の人間のあり方である。
成果より信頼、正しさより共鳴、ノウハウより人格。
あなたという人間の根っこに光を当てる旅が、いま始まろうとしている。
その旅の中で、あなたはきっと、自分にしかない“在り方”を見つけていくことになるだろう。
第1章 DoingからBeingへ:時代の大転換点
「で、あなたは何ができるの?」
「それ、実績あるの?」
「役に立つの?」
現代社会に生きる私たちは、知らず知らずのうちにこうした問いに晒されている。
どんな場面でも、「何ができるか(=Doing)」で価値を測られる。
進学、就職、昇進、起業、SNSでさえも。
人はスキルや成果、肩書や数値で評価されることに慣れすぎてしまった。
でも、そろそろ気づく頃だ。
「Doing」だけを追いかける生き方には、限界があるということに。
■ Doingだけでは、人は救われない
優秀で、努力家で、成果も出している。
それなのに、なぜか満たされない。
なぜか疲れている。
なぜか虚しい。
そんな人が、今、職場にも社会にもあふれている。
一方で、目立った成果もなく、華々しい経歴もないのに、
CHANGE
2008.11.08
2008.11.06
2025.09.29
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
