日本企業の競争優位の確立ー2026年の調達トレンド予想-

2026.01.09

経営・マネジメント

日本企業の競争優位の確立ー2026年の調達トレンド予想-

野町 直弘
調達購買コンサルタント

皆様、明けましておめでとうございます。 今年も調達トレンドの予想を発表します。 喫緊の課題も重要ですが、もう少し戦略的な視点から、日本企業の競争力強化につなげていくための3つの重要なトレンドをあげています。

皆様あけましておめでとうございます。

昨年は、共催セミナー4本で講演、3本のコラム、レポートの執筆などをやりました。また、今年の初めにはリリースされる予定ですが、私が担当したプロジェクトの、クライアント紹介記事の取材対応などもさせていただき、私としては、特に発信に力を入れてきた年と言えます。

コンサルタントの役割は、クライアント企業を中心とした様々な個別企業に対するご支援が主ですが、より広く社会全般へ、新しいコンセプトや課題解決方法を提示していくことも、やっていかなければなりません。そういう点から、今年も引き続き、発信には力を入れていかなければならないと、年初の抱負として考えています。

年末のセミナーでも申し上げましたが、昨年の調達購買部門は、厄年だったと言えます。

引き続きの「官製値上げ」への対応、新たな対応が義務化された「下請法および振興法改正」、実現してしまった「トランプ関税」とそれによるレアアース調達難、それに加えて、T総理の発言で、端を発した「日中政情不安」、財務的にも大きなインパクトを与えた「情報セキュリティ事案」などが、厄年たる所以として、あげられるでしょう。

今年もこの傾向は続きます。

そこで、今回は2026年のトレンド予想として、7つのキーワードをあげます。

 ・継続する「官製値上」
 ・取適法、改正振興法に対する対応
 ・米中問題および日中政情不安によりマルチショア対応が進展
 ・AI活用は本格化
 ・日本企業の競争優位確立が急務、キーワードはリスタート
 ・リサイクル、リユースは、より進展
 ・物流統括管理者(CLO)の選任を横串機能強化につなげる

前半の4つは言わずもがな、ですので、今回は後半3つのキーワードについて説明しましょう。

・日本企業の競争優位確立が急務、キーワードはリスタート

最近、グローバル企業の調達の方と話していて、よく聞くのが、こういう話です。

「従来、日本製造業はコストで勝てなくても、機能や品質やサービスで新興国企業に勝っていた。それが、昨今中国、インド、ベトナム等の新興国製造業の品質が上がっており、日本企業が競争優位を保てなくなっている。」と。

多くの業種、製品でこういう状況に陥っているようです。これを打開するには、より一層のコスト削減や品質向上などが急務と言えます。しかし、現状日本企業は官製値上げや円安、原材料市況の高騰などで、値下げどころか、値上げせざるを得ない状況です。

このような環境下、より一層のコスト削減のためには、競争相手である新興国企業をベンチマークする必要があります。更なるコスト削減のためには、競合をベンチマークした上で、開発・設計の見直しや、新興国企業の購入先である(に負けない)サプライヤの開拓が必須です。

つまり、より一層の、開発購買や新興国のサプライヤ開拓が必要ということでしょう。ちょっと思い出してください。これって、2010年位の状況と同じじゃないですか。ですから、キーワードはリスタートなのです。つまり、従来やっていた活動を、より効果的に行うための仕組みづくりが必要ということです。ここでは、新たな武器であるAI活用なども期待できます。

・リサイクル、リユースは、より進展

最近、古着市場が拡大しているようです。今までは古着は一部のマニアやプレミアがつくデニムなどの服に限定されていましたが、今はそうではなく、服を購入する上での、最初の選択肢となってきて
いるとのこと。要因としては、インターネットの発展により、価格比較やデータ活用が進み、中古市場の可視性と信頼性が高まった、ことと、ある記事で書かれていました。特にブランド品や着物、ドレスなどの、節目消費では中古品やレンタル需要が、かなり伸びているようです。

このように、消費財でもリサイクル、リユースが増えていますが、これは「安価」だからではなく「着用単価」という価値に、目を向けた結果、と言われています。

また、あらゆる地域に、買取屋さんが出店し始めており、これも消費者が価値を重視し、再販品を求め、再販市場が拡大していることが前提と、考えられるでしょう。

同様に、B2Bを中心とした企業調達でも、リサイクル、リユースはより進展します。従来リサイクル、リユースはエコだが、高コストでした。それが、今は「エコで競争力につながる」「サステナビリティ重視」「新たな供給源」の一石三鳥のメリットにつながるものとなります。

そのためには、よりリサイクルしやすい設計である「サーキュラーデザイン」、リサイクル材を採用するための技術である「リサイクル技術」、リサイクル材の調達ルートである「リサイクルサプライチェーン」の確立が条件です。

これは、中国のレアアース輸出規制による供給不安とも絡み、多くの企業が取組みを加速化させるでしょう。また、リサイクル、リユースは、先ほどの日本企業の競争優位にもつながっていくでしょう。

・物流統括管理者(CLO)の選任を横串機能強化につなげる

最後は、予測というよりも期待に近いキーワードです。2026年4月からの改正物流効率化法に基づき、ある基準を超えた荷主企業は、物流全体の効率化と生産性向上を目的として、CLO(物流統括管理者)を設定することが義務付けられました。

従来より、CPO(Chief Procurement Officer)などの職位を定めている企業はありましたが、民間企業の役員クラスで、法律で義務付けられる職位は、会社法以外で定められている取締役など以外では、なかったと記憶しています。

2010年位から、日本企業では、様々な職種の機能強化が求められ、縦割り組織化が進展しました。企画本部、営業本部、開発本部、生産本部、調達本部、財務本部、物流本部などの本部制と、専門機能内での人材育成、キャリア形成などです。

多くの日本企業で、縦割り組織化と専門化が進展する一方で、SCM本部などの横串機能の強化も叫ばれてきましたが、十分とは言えない状況でしょう。

先日、ある企業で4月よりCLOになることが決まっている、執行役員のインタビュー記事を読みましたが、その執行役員は営業部門出身者であり、物流専門家ではないこと、また、CLOとして、単に物流部門の統括をするだけでなく、会社全体の営業、製造、調達、物流部門に横串を刺す、機能を強化するための責任者であることを強調されていました。

これは素晴らしいことです。おそらく多くの企業では、極度に機能特化した、縦割り組織化の弊害が既に出てきています。それに対して横串機能を強化すべき、という声も多く出てきていますが、横串機能・役割の責任者をCLOが担う、ということはとても理に適っています。

機能、組織の縦割りの弊害を課題視している、多くの企業トップが法律で義務付けられるから、やむなく設置するのではなく、記事掲載企業のように、戦略性を持って、CLOを横串機能として位置づけていくことは、大いに予想されますし、CLOがメインとなって、組織の縦割りの弊害を打破していくことを、今年は期待していきたいです。

「社会人時代に起きた出来事」の続編は次回掲載します。

長文になりまして申し訳ございません。
本年もよろしくお願いいたします。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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