2025.10.06
あなたの背中が、未来をつくる ― チームを超えて、社会に残るリーダーの在り方 ― 共鳴型リーダーシップ5話(終話)
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
“背中”だけが語れることがある 職場の空気は、誰がつくるのか? 制度でも、理念でもなく、リーダーの「背中」が決めている。 どんなときに踏ん張るのか 苦しい時に逃げるのか、踏みとどまるのか 言葉だけでなく、自分の行動で何を伝えているか 部下たちは、リーダーの「言葉」よりも、「選択」を見ている。
ある製造業の工場長。
毎朝5分、誰よりも早く現場に出て、床を拭き、工具の位置を整えていた。
誰も見ていないと思っていた。
でもある日、若手の一人が、休憩中にこんな言葉を呟いた。
「工場長、誰よりも現場愛してるよね。あの人がいると、仕事の意味を思い出す。」
それ以来、現場には「掃除を手伝う若手」「工具を揃え直す先輩」が自然と増えていった。
文化は、言葉より先に、行動から始まる。
リーダーの背中が、“目に見えない空気”を動かすのだ。
■チームから社会へ:リーダーが社会的空気に与える影響
私たちは日々、職場という“限定された環境”に意識を奪われがちだ。
だが、リーダーの在り方は、チームを超えて、社会の空気に影響を及ぼす。
例えば…
- 社員に“見せてきた姿勢”が、そのまま家庭での“親の在り方”になる
- 若手が見てきた“リーダーの振る舞い”が、将来の“市民としての行動”に反映される
- 上司の“怒り方”や“話し方”が、誰かの“次の上司像”になっていく
つまり、組織とは、社会を映す鏡であると同時に、社会をつくる小さな単位なのだ。
あなたの背中は、部下一人の人生だけでなく、
その家族、地域、次世代の文化にまで、静かに響いていく。
■“背中で語れるリーダー”であるために、今なすべきこと
リーダーが「背中で語れる」存在であるために、必要なのは、派手な成果でもスキルでもない。
それは――“日々、どんな姿勢で立ち続けているか”である。
以下は、そのための3つの柱である。
1. 「意思」を持って立つ
リーダーの立ち姿は、意思を表現する。
逃げずにそこに立ち続ける姿勢こそが、信頼を生む。
問い:
- 自分は何のためにこの場に立っているのか?
- 自分が今、守るべきものは何か?
2. 「誠実さ」を手放さない
誠実であることは、楽ではない。
だが、誠実さこそが、人格と信頼の核心である。
問い:
- 自分の判断に“ごまかし”や“逃げ”はないか?
- 誠実であり続けた結果、誰に何を残せるか?
3. 「感情」を通わせる
背中から伝わるのは、言葉以上に、“情熱”“優しさ”“覚悟”といった感情である。
感情を交わすことは、無防備さを伴う。だが、それが人を動かす。
問い:
- 部下や仲間と“心を交わせているか”?
- 自分は、想いを語れるリーダーだろうか?
■【明日からできること】“背中の力”を育てる行動
Step 1|“無言のメッセージ”に意識を向ける
- 会議中の姿勢、聴く態度、部下への目線。
→ それは何を語っているだろう?
Step 2|「言葉と行動の一致」を毎日振り返る
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
