“信頼されないリーダー”がもたらす組織の静かな崩壊 あなたの職場に、こんな上司はいないだろうか―― 「人一倍仕事ができる。判断も早い。しかし、部下の信頼はない」。 指示は的確で、成果にもシビア。 だが、どこか空気が重く、チームの会話は少ない。 そして、静かな退職(Quiet Quitting)という現象が生まれる。
リーダーシップ開発の先進国アメリカでは、
リーダーを育てるうえで「知識」や「スキル」よりも、
“Virtue(徳)”を中核に置いたプログラムが広がりつつある。
中でも重視されるのが、以下のような資質だ:
- 誠実(Integrity):約束を守り、ウソをつかず、責任を取る
- 謙虚(Humility):自分の限界を認め、他者から学ぼうとする姿勢
- 共感(Empathy):相手の視点に立ち、感情を理解しようとする力
- 公平(Fairness):人によって態度を変えず、誰に対しても敬意を持つ
- 勇気(Courage):困難な状況でも、自分の信念に従って決断する
これらの徳性は、性格や気質ではない。
訓練と意識によって“育てることができるもの”だ。
そして、これらの徳を備えたリーダーのもとでは、
部下が自分の意見を言いやすくなり、失敗を恐れずにチャレンジできる。
つまり、心理的安全性(Psychological Safety)が自然と醸成されるのだ。
「人格」が、組織の空気を変える
職場における空気は、目に見えないが非常に強力だ。
一人のリーダーがイライラしていると、
その空気はチーム全体に伝播する。
逆に、リーダーが「ありがとう」と自然に言える人であれば、
その文化は徐々に根づいていく。
つまり、リーダーの人格こそが、
組織文化を形づくる「最も根源的な“土壌”」なのだ。
リーダーが人間らしく在ることで、
部下も人間らしく、安心して仕事ができる。
その結果、チームの生産性が上がり、離職率も下がる。
Gallup社の調査でも、
「上司を信頼できない職場では、静かな退職が起こる確率が3倍になる」
というデータが示されている。
逆を言えば、“人格あるリーダー”の存在が、社員の心を職場に繋ぎとめる最大の要因になるということだ。
徳を宿すリーダーになるための「3ステップ」
人格あるリーダーになるといっても、
「いまさら自分の性格を変えるのは無理だ」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、人格は“生まれ持った資質”ではありません。
日々の選択の積み重ねで、徐々に育っていくものです。
ここでは、現実的かつ実践的な「3つのステップ」を紹介します。
Step 1 まず、“自己認識”を深める
人格的なリーダーは、まず自分を深く理解することから始まります。
自分が何に怒りやすいのか、どんな場面で萎縮するのか。
何を恐れ、何にこだわっているのか。
これらを客観的に把握することが、他者との関係性を築く土台になります。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
