水と文明と災害

画像: 玉川上水

2024.01.07

ライフ・ソーシャル

水と文明と災害

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/日本の国力には限界がある。災害が起こる前に、井戸や溜め池、汚水の分散処理など、厳しい現実を直視して、住民たちとともに考え、行動し、災害に備えておく実務作業が必要なのではないか。/

しかるに現在、東京のトイレの水洗化率は、全国でも抜きん出た99.8%。しかし、2019年秋の武蔵小杉のタワーマンションでわかるように、地下を持つビルはもちろん、一般のマンションや住宅でも、汚水タンクが下水管より低いところがあって、こういうところでは、ポンプで強引に汚物を汲み上げて排水しており、電気が止まればアウト。いくら逆流防止弁があっても、建物内に残っていて落ちてくる汚水が地下から一階まで溢れかえることになる。

仮設トイレは、タンク容量一基500リットル。四~五人で一ヶ月の想定。逆に、百人いたら一日で満杯。毎日、バキュームカーで汲み出すことが必要。一台3000リットルの中型でも、六基分しか運び出せない。東京23区の昼間人口は、1200万人を越え、港区だけでも94万人。となると、仮設トイレは12万基は必要で、バキュームカーが、関東のどこか処理可能なところまで、毎日、2万往復しなければならない。もちろん、バキュームカーにもガソリンが必要で、まして地震や津波、地崩れで道路が寸断されていたら、1台で何往復もできないだろう。

政府はいまだに、政策=予算、と考えているようだが、いくら予算を付けても、現在の日本の国力には限界がある。アホなお祭り騒ぎをやる前に、災害が起きる前に、井戸や溜め池、汚水の分散処理など、厳しい現実を直視して、住民たちとともに考え、行動し、災害に備えておく実務作業が必要なのではないか。


能登半島地震の状況(1月6日時点):国土交通省資料

https://www.mlit.go.jp/common/001716765.pdf


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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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