高齢化が進んでいるのに、「老人クラブ」の会員数が激減してるのは、なぜか?

画像: 総務省統計局「国勢調査」、「人口推計」

2023.10.18

ライフ・ソーシャル

高齢化が進んでいるのに、「老人クラブ」の会員数が激減してるのは、なぜか?

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

老人クラブに加入している高齢者の割合は、1998年の43%から12%にまで激減している。

この観点から老人クラブを見ると、まず「他者との類似性」は、「高齢者であること」と「その地域に住んでいる」という2つしかありません。それはまた、外形的なものに過ぎません。

一方で、例えば高齢者大学校やシニアカレッジのような所では、「歴史好き」など趣味や関心が共通しており、学びたいという欲求にも類似性があります。それは、外形的ではなく内面の類似性であり、だから、遠くからでもわざわざ通ってくる人が多いのでしょう。

次に、「他者との相互依存的関係」では、地域で長く暮らしてきた中でできた先輩・後輩関係や上下関係がありそうな老人クラブに比べて、高齢者大学校では、講師やリーダーの前では皆「受講生」という同じ立場になって教え合う、助け合う、褒め合うといった相互依存の関係ができやすくなっています。そして、その心地よい相互依存関係を維持しようと努め、その場の発展にも協力的な姿勢をもつようになってきます。

実際、学びの場でも、スポーツ活動やサークルでも、目的や趣味・関心を同じくして集まった高齢者の方々の言動は、とても規範的です。コミュニティー感覚にあふれている状態といえるでしょう。

とはいえ、老人クラブが役割を終えたとは思いません。

現在、高齢者がいる世帯のうち、高齢者だけで住む世帯は6割を超えています。しかし、地域コミュニティーにはなかなか頼れない状況であり、長い高齢期を自立して楽しく暮らすには、高齢者同士の互助関係が非常に重要になってきているからです。

その意味では、老人クラブは目的や活動内容を見直し、世の中にあまたある講座や活動のようなものとは一線を画した、互助関係の強化・深化に絞ったものとして再生を図る――という方向はあり得ると思います。また、「地域を限定しない」「役職などの上下関係や、組織運営の方法などを見直す」などして、出入りがしやすい自由な組織に変わる必要もあります。

「老人クラブ」という名称がよくない(から入会したくない)という声も聞きますが、何のために集まるかという目的が定まれば、名称も変わり、入会のハードルも下がるかもしれません。老人クラブは、1963年施行の「老人福祉法」において位置付けられたものですが、その当時と今とでは、高齢者の割合も、健康状態や体力も、社会における役割も大違いですから、根本的な見直しは必然ともいえるでしょう。


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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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