キャンペーンとリスクとITリテラシーと  ~吉野家からオメガまで

2022.04.05

組織・人材

キャンペーンとリスクとITリテラシーと  ~吉野家からオメガまで

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

牛丼の吉野家のヘビーユーザー向けに、オリジナル名入り丼がもらえるキャンペーンが炎上しました。一方、牛丼の対極ともいえる高級ブランドでも、スウォッチがオメガとコラボした特製モデルを発売したところ、店舗が人であふれかえり、整理券配布すらできない大混乱となる事件が起きました。 なぜこんなことが未だに起こるのでしょう。それは経営者の危機管理意識とITリテラシーにあります。

だから経営責任なのです。

4.限定発売などの転売ヤー・ホイホイ
牛丼など安価な商品は、元来ネットユーザーとの親和性は高く、気取ったブランド品などと違って、支持を集めやすい環境にあります。それがこれだけ反発を招いたのは正にミスとしか言いようがなく、企業として組織としての危機管理が出来ていない証明だといえます。

スイス時計という高級ブランド品が特別モデルで安く買える。しかも初回販売数が限定ともなれば、今や「転売ヤー」を全員集合させるほどのの撒き餌となることを想像できないことが間違いです。限定発売などは正に転売ヤーホイホイとも呼べる、真のカスタマーではなく、もはや転売ヤーのためのプロモーションとなっています。

個人売買サイトやオークションによって、転売は一般人が気軽に出来るアルバイト、プロがガッポリ利ざやを稼げるせどり商売として確立されました。インターネットによって生み出された新商売です。

渋谷の店頭にあふれ返った購買者が、すべてスウォッチ/オメガユーザーには見えませんでした。相当数が転売ヤーではないかと容易に想像できます。転売ヤーのためのプロモーションなど、全くマーケティングの意味も、価値もありません。

当然この後、ネットで法外な値段で売買されるからです。このすべてに関与する人たちは、本来のブランドユーザーではないといえるでしょう。

5.吉野家の判断ミス
「自由」の概念がかつてとは全く違っています。「自由な名入れ」が何を意味するのか、侮辱的な言葉や猥褻な単語は良いのでしょうか?文字数は何文字でも無限に載せられるのでしょうか?著作権関係の対応は??

アイデアとしてオリジナル丼は悪くないと思いますが、このようなリスクがあることまで想定できずに、現在の社会環境でキャンペーンは無理です。加えて客相の対応でさらなる燃料投下も、証拠の残るメールでの対応は、常時ネット公開されるリスクがあることすら想定していないことになります。

ITリテラシーはリスク管理において絶対に欠かせません。

昔とは違うのです。単なるオペレーションミスは、組織全体、ブランドを毀損するダメージとなります。これは経営責任です。いちいちい経営者がチェックする必要はありません。単に社内にリスク管理、リスクチェックする機能があれば良いだけです。

経営者の危機管理意識とITリテラシーは絶対に問われる時代です。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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