キャンペーンとリスクとITリテラシーと  ~吉野家からオメガまで

2022.04.05

組織・人材

キャンペーンとリスクとITリテラシーと  ~吉野家からオメガまで

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

牛丼の吉野家のヘビーユーザー向けに、オリジナル名入り丼がもらえるキャンペーンが炎上しました。一方、牛丼の対極ともいえる高級ブランドでも、スウォッチがオメガとコラボした特製モデルを発売したところ、店舗が人であふれかえり、整理券配布すらできない大混乱となる事件が起きました。 なぜこんなことが未だに起こるのでしょう。それは経営者の危機管理意識とITリテラシーにあります。

1.吉野家ドンブリ事件
吉野家が1回300円以上買ったお客が「1マイル」をもらえ、最高位のマイルを集めればオリジナルの名前入りドンブリがもらえるキャンペーンを、昨年7月から実施しました。

丼は毎日8ヶ月以上食べ続けないともらえないという苦行(マイル2倍デーなど細かいルールあり)を求める以上、特に気合いの入った応募者が集まります。中には自分の店など本名以外でオリジナル丼を作ろうと挑戦した人もいたようです。

吉野家は当初問合せにおいて、それらも可能と応えていたにも関わらず、やっぱり本名しかダメという方針転換が行われたことで、大きな反発を呼びました。さらにその問合せやり取りが不誠実であり、客が悪いとも取れる回答文面がネットでさらされ、批判は止むことなく燃え上がっています。

2.高級ブランド店炎上
スイス時計オメガとスウォッチがコラボしたモデルが発売されましたが、発売日の発売時間には渋谷や大阪の店舗に購買者が殺到し警察沙汰となり発売は中止されました。およそ高級時計と似つかわしくない騒然とした光景がニュースでも流れました。

確かに結果としてスウォッチ/オメガが話題となりましたが、こんな話題を狙ったものだったのでしょうか?マーケティングの一環で、目立つキャンペーンは昔からあります。

私マーケティング担当者時代、どうすれば少ない費用で効果が極大化できるか日々考えました。しかし究極に目立つのからといって、犯罪など非合法な手段は論外。警察ザタなど迷惑かける選択などはあり得ません。

スウォッチはわざわざ警察を巻き込んでニュースになるようなプロモーションを狙ったとは到底思えず、単に今の市場環境を全く理解せず、昔からのプロモをそのままやってしまったのではないかと想像します。

3.炎上商法とブランド毀損
限定モデル発売やオリジナルグッズプロモーションなど、昭和のころからある古典的マーケティング手法です。「特別感」という購買意欲を煽る、原始的な手法だけに効果は間違いなくあります。

しかし一方で社会環境は昭和とは激変していることをどこまで認識しているのでしょうか。マーケティングプロモは担当に任せっきりの経営者は、経営者としての組織運営責任を放棄しているとしかいえません。

炎上商法はマーケティングではないのです。

マーケティングであるなら、ただ爆売れするだけでなく、そのブランドが傷つくことがあってはならないのです。高級ブランドに限らず、店舗・企業ブランドが毀損されるようなものはプロモーションではありません。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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