今後のワクチン接種はクラスターが発生しやすい場所で働く人たちを優先せよ

画像: slgckgc

2021.06.09

経営・マネジメント

今後のワクチン接種はクラスターが発生しやすい場所で働く人たちを優先せよ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

医療従事者、そして65歳以上の高齢者が順次、ワクチンを接種されつつあるが、その次の優先接種対象は戦略的に考えるべき。その順番を間違えると、日本は感染力の強い変異株に蹂躙されかねない。

65歳以上の高齢者に対するワクチン接種は7月末までに完了するめどがついたという。しかも職場接種を進めたいとする企業・大学が増えてきた。菅首相が提唱する「一日100万回」が目標の射程範囲に入ってきたといえる。

政府は当初、次は基礎疾患のある人と60~64歳を優先する方針だったが、最近この年齢順の指示を撤回し、現在は各自治体に優先順位の方針決めを任せている。基礎疾患のある人を先行させろという指示も、自治体は誰が基礎疾患を持っているのか把握できていないので難しいケースが少なくない。

政府のもともとの発想は「罹患した場合に重症化する恐れの高い人たちに優先接種してもらって、早く安心してもらいたい」というもので、「市民の不平・不満の的になりたくない」行政の思考としては理解できる。

しかし変異株が市中感染の主流になりつつある中で、感染再拡大とワクチン接種のスピード競争が、日本での第5波を防ぐことができるかどうかを決める。そのために必要な戦略的発想は「いかにクラスターの発生を抑制するか」であろう。ならば優先すべきは「クラスターが発生しやすい場所で活動せざるを得ない人たちに優先してワクチンを接種」することである。

しかもその際、この変異株ウイルスの特性(感染スピードがさらに上がり、しかも若い世代も感染・重症化しやすい)を踏まえることが今まで以上に重要だ。すると次のような、「他人と密になりやすい職場環境」で働く「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる人たちこそが優先されるべきだ。すなわち:

  • 消防隊員(救急隊員が中心だがそれ以外も含む)
  • 介護施設の従業員(介護士が中心だがそれ以外も含む)
  • 保育施設の従業員(保育士が中心だがそれ以外も含む)
  • 小中高校・大学の教職員
  • バス・タクシーの運転手

注)以上には検疫所や保健所の職員が挙げられていないが、彼らは既に優先接種対象とされている「医療従事者」に明示的に含まれるという前提である。

こうした主張をすると、一部の人たちからは不平不満も出よう。例えば60~64歳の人たちからは「余計な事を言うな。せっかく『そろそろ自分たちの番』だと期待していたのに」というお叱りが出てくることが予想される。私もその年齢だからその気持ちはよく分かるが、エッセンシャルワーカーの人たちは毎日リスクを背負って出勤しているのだから、少しだけ譲ってあげて欲しい。ワクチンは国民全部に行きわたるだけの分量が確保されているので、焦らずにもう少し待って欲しい。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。新規事業の開発・推進、そして既存事業の収益改善を主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/               弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashinban/            最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

フォロー フォローして日沖 博道の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。