「安心」が「ニューラグジュアリー」:コロナ禍のブランディング

画像: ダイナ・サーチ撮影

2020.07.28

経営・マネジメント

「安心」が「ニューラグジュアリー」:コロナ禍のブランディング

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

アメリカでは、三月の「ロックダウン」以降、スーパーでのお買い物の在り方が劇的に変化している。現在、「コロナ感染予防ワクチンが一般に行き渡るのは最速でも来年(2021年)の春」と言われる中、店舗での安全対策は、「必須要件」であるばかりではなく、重要な「ブランディング要素」にもなりつつある。

小売業界の事例ではないが、今年五月にユナイテッド航空が清掃・除菌メーカーのクロロックス(Clorox)と、アメリカの医療施設として名高いクリーブランド・クリニック(Cleveland Clinic)との提携を通して「クリーンプラス・イニシアチブ(CleanPlus initiative)」を立ち上げた。「クリーンプラス・イニシアチブ」は、クロロックスとクリーブランド・クリニックの知見を基盤に、乗客の健康と安全を最優先に掲げたトラベル・エクスペリエンスの提供を謳うものである。具体的には、ユナイテッド航空の機内や空港の関連エリアにクロロックスの製品を配置するほか、クロロックスとクリーブランド・クリニックの研究者や医療専門家のアドバイスを得て開発された清掃・除菌作業手順やプロトコルを徹底するというものである。平時ならば、さほど注目もされないような取り組みだが、コロナの時代には、競合の航空会社との差別化をはかる一要因として効果を発揮しているといえる。

コロナ禍中においては、「清潔」「安全」「安心」が顧客のロイヤルティを確保する新たな差別化要因になり得る。店舗内部や周辺の環境整備、設備やサプライの配置、店員による作業・手順の遂行など、あらゆる要素がブランディング要素として駆使できる。ワクチンの開発や普及には少なくとも数カ月がかかると予想される中で、こうした方策をクリエイティブに考案し、フットワーク軽く遂行していくことが要求される。ビジネスを運営していくうえでの新たな「必要要件」となったコロナ安全対策を、「コロナ・コスト」を生みマージンを圧迫するものとして忌み嫌う向きもあるが、見方を変えれば、これは顧客の心をつかみ、生涯価値を倍増させる意義ある投資である。そう考えれば「攻め」の姿勢で積極的に取り組むことができ、相応の成果を生むに違いない。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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