映画のターゲティングに学ぶ

ターゲティング概念はビジネスにおいては当たり前のものとなったと思う。誰でも、この商品のターゲットは20代女性で、といったことは語るようになってきた。ただ、絞る考え方が普及してきた一方で、いかに広げるか?というポイントの知見は広まっていない。今回は映画におけるターゲティングの考え方を参考に、概念のおさらいと、広げるための考え方を解説したいと思う。

 ターゲットを絞ることによって狭い市場での強さを発揮する。ホースの口を絞ると水が勢い良く飛んでいくように、絞ったコンセプトは狭い範囲において強さを発揮する。

 このことは、ほとんどの人が知るようになった。デモグラフィックな属性の軸を使ったセグメントの切り方は誰でも知っている。年代、世代、男女、居住地域などの軸でターゲットを分けて細かくしていく手法である。

 ただ、いわゆるマス商材、映画などの商材では、コアなターゲットを持ちつつ、いかに広げるか?という視点が非常に重要になる。その際に、デモグラフィックデータはあまり意味をなさないことがこれまでに分かっている。

 「映画の好み」という概念に属性データはあまりクリティカルな影響を持たないのである。

 だからサイコグラフィックな軸をベースにして、セグメンテーションしていくことによって、商材が別セグメントへと広がる軸を持てるのではないか?ということは、映画業界では研究されてきた。

 私が付き合いのあった映画のデータ分析会社では、ロジャースの普及理論をベースに、映画の好みで顧客を5つのセグメントに分け、セグメントごとにモニタリングパネルを作り、データを取り続けていた。

 その結果、わかったこととしては、サイコグラフィックな軸でも、映画自体の好みの違いでクラスタリングしているため、ほとんどの映画でセグメント間のヒットの伝播はないことがわかった。

 キャズムのようにイノベーターとアーリーアダプターの間の溝と言うことではない。

 たいていの映画は1つのセグメント内でのヒットで終わる。たまに大ヒットする映画は、違うセグメントでのヒットが同時に起こる。

 具体的には「ハウルの動く城」や「もののけ姫」などの宮崎映画は違うセグメントで、同時に大ヒットが起こる。

 つまり、口コミによる情報伝播は、同一セグメント内で起こる。異なるセグメントに対して、口コミでの広がりは薄い。だから、別々に違うセグメントに対してプロモーションを仕掛けていけば、間口を広く取れるので、セグメントごとに情報伝播が起こり、映画を見に行くという行為につながっていく。

 ヒットする映画は、ほとんどが大規模プロモーションによるパターンというなんとも夢のない結果になっていた。

 単館上映などで、長期間やり続ける映画は、特定セグメントの人々が小規模に来続けるというパターンで、違うセグメントに飛び火して長く続くわけではない。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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