熊田曜子親子拒否事件に見るサービスのあり方。正しい点と間違った点

2018.11.08

組織・人材

熊田曜子親子拒否事件に見るサービスのあり方。正しい点と間違った点

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

3人の子持ちである熊田曜子さんが、墨田区の児童館の中の施設に入ろうとしたところ、「親一人に子は二人まで」という規制で入れない事件がありました。融通の利かない施設への批判が出ていますが、制度運営側とユーザー側の折り合う点はあるでしょうか?

しかしよくある「ローペイ・ハイサービス」というのは、立食いそば屋にホテルサービスを求めるのと同じ、モンスター行為です。売価に見合わないサービス提供をうたうことこそ、やりがい搾取やモンスタークレーマーを育てることになります。それは価格設定が間違っているのであり、高いフィーを取らずに高いサービスを提供することが間違いであるという当然のことを、特に日本社会では強く経営者が実践しないことでブラック企業が生まれるといえるでしょう。

3.サービス提供の原理原則
熊田さんの事件で、「一人くらい多めに見るべき」「困った母親がかわいそう」という意見は、「区役所の窓口が5時ピッタリに閉まるのは怠慢」と同類の批判でしょう。実際熊田さん一人を大目に見たからただちに事故があると決まった訳ではありませんし、区役所窓口に至っては、まだまだ職員の方がいる訳で、難しい処理ではなく単に書類提出に支障があるとは思えません。

しかしこうした人情は、サービス提供においては明確に切り捨てなければなりません。なぜなら区役所のような公的サービスは、「全体の奉仕者」であり、一部のための奉仕者ではないからです。5時1分に窓口に来た人の書類を受け付けている最中、5時6分に次の人が来たらどうするのでしょうか?その人も受付けている中、さらに5時11分になったら?

区役所の入り口を、5時ジャストに閉鎖し、その後入ることができないようにする銀行方式は一つのアイデアです。この方式を採れば、例外扱いを無制限に行うことはなく、最大でも処理すべき人数は決まります。役所でも警備員さんなどを導入し;
①時点でそこにいる人まで受け入れる
②処理スピードを判断して、5時前から新規受付終了時間を設定する
といった対策を取ることで、対応はできるようになるでしょう。

児童館のすくすくルームは親と子供の比率制限を設定した段階で、こうした事象が起こることは当然予期しなければならないのです。その準備が、結果として単に「利用方法に書いてあっただけ」だったことが騒動となりました。

区役所の方針は全く間違っていません。しかしサービス提供の現実を無視してしまったことは、準備不足として経営者が責めを負うべき問題です、この場合の経営者が区長なのか施設長なのかはわかりませんが。

万が一の事故への対応を考えれば、保護者1人子供2人には合理性があります。問題はここではなく、それをどう知らしめたか、また実際の対応をどこまで考えられたかです。Webサイトはもちろん、児童館入り口でも、こうしたトラブルを呼ぶことが明らかなものであれば、朱書きした看板を立てたり、入り口に何重にも注意書きを貼ったりと、広報対策を取るべきでした。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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