“自立幻想”より”依存の自覚”(【連載11】新しい『日本的人事論』)

画像: Jun K

2018.07.18

組織・人材

“自立幻想”より”依存の自覚”(【連載11】新しい『日本的人事論』)

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。

ところが、ほとんどのビジネスパーソンは依存先を明らかにはしていない。「私は何にも依存していない」と誤解しているか、依存しているがそれが「誰か」「何か」を明確にしないままでいる。依存先とは、すなわち貢献や配慮をすべき相手だ。だから、依存先をできる限り広げて考えることが、貢献する機会を増やすことになる。依存先を具体的に把握しないままでいるのはもちろん、依存先を狭く設定するのも貢献の機会を乏しくしてしまう。依存先を広く具体的に捉え、依存先を大切にすることによって、成果をあげる機会が得られ、それがキャリアにつながっていくのである。

依存先は、次のような観点から考えられるだろう。

①私の仕事の顧客は、誰か?(この仕事の依頼者は誰か?)

②仕事の関係者は、誰か?(誰と一緒に進め、誰に移行していくのか?)

③私が扱っている商品やサービスを生み出したのは、誰か?

④私が使っているツールは、誰が作ったのか?

⑤私が仕事を進めるために必要な環境を作ってくれているのは、誰か?

⑥私が心身の安定をもって仕事に臨めているのは、誰のおかげか?

⑦私が気持ちよく働けているのは、誰のおかげか?

このような観点から、自分が依存している人やものを思いつく限り、具体的に記述していく。そして、その様々な依存先に対して自分は何ができるか、どのような貢献や配慮ができるか、何が期待されているかを徹底して考え、行動に移していく。このような姿勢の人に対して機会が与えられる。この積み重ねこそが、キャリアなのである。ビジネススクールや研修や読書によって得られる知識は、依存先からの期待に応えるための手段に過ぎない。それらからいくら知識を得ても、「私は自立している」と勘違いし、依存状態の自覚がなければ、期待されず機会もないから知識を使う場面がない。学びだけでは良質なキャリアが築けないのは、こういう理由だ。

「優れたキャリアは、組織を信じ、職場の仲間と良好な関係を築き、“自らの職業人生のこれからを敢えて組織や職場に委任する(entrust)”ことによって形成される。独善的な目標や計画、孤立した学習や努力ではなく、組織や職場の仲間との協創によって優れたキャリアが実現する。」これが、キャリア・エントラスト理論の考え方である。委任する(entrust)にはまず、自分が何に依存しているのかを具体的に理解することが大切だ。そして、その依存先と相互理解を深め、相互に期待しあう関係を作る。そうすれば、安心して委任することが可能になり、優れたキャリアにつながるための機会に大いに恵まれるはずだ。自分は自立しているという“自立幻想”のままでは、いくら学んでも優れたキャリアは構築できない。

【つづく】

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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