謝罪で使ってはいけない仮定法過去完了(改訂)

2021.08.05

組織・人材

謝罪で使ってはいけない仮定法過去完了(改訂)

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

河村市長がやらかしました。過去の記事を改定して再掲します。 政治家やキャリア官僚といった超エリートの方々のやらかしは後を絶たず、謝罪会見が開かれるたびにでるのが「(迷惑かけた/傷付けたとすれば)お詫びしたい」という言葉。せっかくの謝罪を台無しにする、使ってはいけない言葉です。しかし謝罪会見、特にこうした高位の職にある人たちが多用しているように見えます。

なぜこんなひどい言葉遣いが多用されるのでしょう?謝罪含む不祥事の記者会見でも弁護士が同席することがあります。また危機管理として弁護士が介入した結果、非常に上首尾に事態が収束することもあります。何より裁判になれば、自ら不利になり得るような発言は控えなければならないのでしょう。

ところが過剰な防衛をした結果、穏便に終わることもできたはずの謝罪が、いきなり裁判沙汰、いわばケンカ腰のやりとりにエスカレートしてしまうのです。

3.エスカレートの原因は?
発言がすべて証拠として記録される裁判などであれば、そこでの発言一つが左右する影響力は大きいでしょう。しかし謝罪は裁判ではありません。裁判までもっていかずに済むための危機管理のコミュニケーションです。そこで過剰な防衛をしてしまうことで、いきなり相手に挑戦状を叩きつけることになります。

アメリカでは「アイムソーリーと言えば全責任を負わなければならない」といった説を聞くことがありますが、私はNYSE上場企業との社運を賭けた交渉の場ですら「ソーリー」のような単語は使ったことがあります。日常生活でも普通に耳にする単語です。「言ったら終わり」のはずがありません。さまざまな状況や立場によって、事態を悪化させるのは別に一つの単語で決まるようなものではありません。

政治家や高官という、人の上に立つ立場が、過剰自己保身に走った結果が仮定法過去完了的な不快な謝罪になってしまうのでしょう。法律だけで事態が済むならともかく、そもそも炎上までもっていかずに消火することが危機管理の原則のはずです。こうした手順を理解しない以上、政治家の謝罪は炎上を呼び続けると思います。

孫子では戦って相手を打ち負かすことより、戦わずして勝つことを最上の戦略としています。コミュニケーション戦略においても、謝罪がきちんとできないお偉方は戦略的判断力も乏しいと言えるのではないでしょうか。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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