今回は趣向を少し変えて、投資対象国として魅力あるニュージーランドの経済をマクロ、ミクロ、そして金融政策を考察してみましょう。
南半球の楽園
ニュージーランドは皆さんにはどのような国に映りますでしょうか? 人口約470万人の小国。金融が主たる国スイスと同規模の国です。南半球の風光明媚な国であり、人間の数よりも羊の頭数が多いと言われる、いわゆる農業国です。そして経済は観光、木材などの輸出に依存すると言われています。
政治体制は、保守の国民党とリベラルな労働党の2大政党体制であり、安定していると言えるでしょう。現在は国民党のイングリッシュ首相が政権を担っています。過去の動きを見ても、極端な政権交代劇はなく、政治のマンネリ化と経済の好不調により、政権が交代しているようです。
国民党と労働党がある一定の時期で健全に交代しているため、その意味でも非常に安定している政治体制であると思います。そして健康、医療、老人福祉対策なども充実しており、先進国のひとつと言えます。
経済の状況と主要産業
マクロ経済を見てみましょう。国内総生産(GDP)1,850億ドルと、隣国オーストラリアの1兆2050億ドルと比較すると約6分の1の経済規模と言えます。そしてその中身を見ると興味深いことが分かります。
農業製品の輸出比率は、酪農製品:25.1%、肉類:11.2%、木材とその製品:6.9%(2016年)、そして主な輸出先として、オーストラリア:21.5%、中国:14.9%、米国:9.2%(2016年)となっています。牧畜が主力産業であり、乳製品の価格が景気動向に大きく左右します。GDT(Global Dairy Trade)指標が2週間毎に発表され、金融市場ではニュージーランドの景気動向を占う羅針盤になっています。
下記グラフ(出所:global Dairy Trade社HPより)は過去10年の価格の動きを示しています。現在は1000前後に位置するようです。2014年から2015年当時は1000を大きく下回っており、酪農産業には苦しい時期であったと言えますが、それもここ2年間は安定した推移にあるようです。
酪農大手業者フォンテラ(Fonterra)社が酪農市場を仕切っている構図があるようで、フォンテラ社の業績がニュージーランド経済の動向を左右していると言えます。フォンテラ社が酪農家から牛乳などを仕入れる価格を決定するために、酪農家の経営状態がフォンテラ社との交渉により、大きく依存すると言われています。
対外的には、中国の乳製品輸入量に大きく依然する体質があるようです。急速に欧米風の食スタイルに変貌する中国では、チーズなどの乳製品を大量に輸入する傾向にあるようです。また、中国では粉ミルクに有害物質が混じっているなど問題が多く、中国消費者は海外製品を購入する傾向があり、その主力輸入先がニュージーランドと言えます。
中国がこの先、「新常態」の経済成長を続けると、ニュージーランドの乳製品は安定して増えて行くように思えますので、堅実な乳製品の輸出が見込めます。これも安定したGDTとなっている要因であると言えます。
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