曲がり角を迎えている「ベースアップ」「定期昇給」。争点はどこに?

2018.04.02

経営・マネジメント

曲がり角を迎えている「ベースアップ」「定期昇給」。争点はどこに?

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南青山リーダーズ株式会社

2018年の春闘がまさに大詰めを迎えようとしています。連合(日本労働組合総連合会)は、ベースアップ(ベア)の幅を「2%程度を基準」とし、定期昇給(定昇)と合わせて4%程度の賃上げを求める方針を掲げました。 一方、政府も安倍首相が3%の賃上げを経済界に要請し、経団連(日本経済団体連合会)は、ベアと定期昇給を合わせて3%の賃上げを会員企業に求めています。 バブル経済崩壊後、死語になりかけていた「ベースアップ」という言葉。アベノミクスとともに2014年の春闘から復活しましたが、「ベースアップ」と「定期昇給」の違いを正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。これらの言葉の意味を軸に、賃上げのしくみを再考してみます。

定期昇給はわが国固有の賃上げ制度


欧米においては成果主義の考え方から職能給が浸透しているため、そもそも年齢や在籍年数が増えるだけで賃金が上がる、という定期昇給の概念がありません。仕事における能力を査定して、そこから賃金を決定する職能給が個人別賃金制度の基本となります。Aさんは▲▲の仕事ができるから○○円が適切だが、Bさんはまだ■■を任せられないから○○円、という考え方です。

わが国においては、在籍年数が増えることによって習熟度が増し、能力も向上して生産性に寄与できる、と考えられてきました。ここから勤続年数に応じて賃金を上げる定期昇給という概念が生まれ、わが国固有の賃上げ制度として多くの企業で行われてきたのです。欧米の考え方を取り入れた職能給の考え方も、高度経済成長期から安定成長期へ移行する際、それまでの集団主義的な労働関係の見直し策として人事考課制度を通して賃金制度の中で試行されてきました。しかし、これはあくまでも年功序列・終身雇用というわが国の雇用慣行を前提とした定期昇給制度が基本となっています。

終身雇用・年功序列の崩壊

近年ソニーと日立に続いてパナソニックまでが年功序列の考え方を廃止。仕事や役割を重視する賃金体系の導入に踏み切ったことで、わが国固有の賃上げ制度は大きな転換点を迎えています。そもそも年功序列は、経済成長が永遠に続き、若年労働者が増え、企業は成長し続ける、という前提で成り立っていました。定期昇給制度のもとでは中高年層に能力とは関係なく高い賃金が支払われます。これを支えるのは、毎年大量に採用される若年労働力です。ところが、バブルがはじけて以降、経済成長が止まり、少子高齢化によって若年労働者が足りなくなることで、この前提が崩れてしまったのです。

経済成長が見込まれない今のわが国においては、企業の拡大・成長も予測ができず、若年労働者に将来の希望を持たせ、愛社精神をはぐくむ終身雇用・年功序列という従来の雇用慣行を維持することが難しくなってきました。大手企業でさえ賃金体系の変更を余儀なくされるのは、このような背景によります。

さらにデフレがこの傾向に拍車をかけています。戦後から続いたインフレ経済の中、物価の上昇に合わせたベースアップもデフレの局面では意味合いが薄れてきました。インフレ経済における名目上の利益の増大という原資がない中、経営側からはベースアップなど到底無理であり「ない袖は振れない」ということになります。
終身雇用・年功序列の崩壊ととともに、定期昇給・ベースアップという春闘での争点も、曲がり角にきていると言ってよいでしょう。

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