「自分は小心者」だと話すブリヂストン 元CEO・荒川詔四氏。大学生の時は、美術部でおとなしい学生だった。 「ブリヂストン美術館」を持っている企業だから文化的な会社だろうと思い、当時のブリヂストンタイヤ(のち、ブリヂストン)に入社するが、真逆の荒々しい雰囲気の職場だったことに驚いたという。 不安でいっぱいのスタートを切った荒川氏はその後、タイやトルコでの海外赴任でリーダーになるということはどういうことか、与えられた仕事を全うすることの大切さについて学んでいった。 文化放送「The News Masters TOKYO」のマスターズインタビューでは、パーソナリティを務めるタケ小山が、荒川氏の考える“小心者リーダー論”について聞く。
(前編:「ブリヂストン元CEOが語る。リーダーシップを持つ人は仕事にどう向き合うか」)
「世の中に正解はない」
「小心者であるということは、いろいろなことを心配するということです」と語る荒川氏。
「そういう心配症とリーダーシップって、どうも結びつかないイメージなんですが」とまだあまり納得のいかないタケだったが、その続きを聞いてさらに驚くこととなった。
「だって、タケさん。世の中に正解なんてないでしょう?だったらとにかくいろんなことを心配して、その心配から逃れたいから一生懸命考える。そうやって考えることで自分なりの結論を出すしかないんですよ」
つまり、荒川氏の言いたいことはこういうことだ。「これが正解です」というものは、世の中には基本的には存在しない。どんな答えも、自分の頭で考え出すしかないのだ。
だから、少しでも正解に近づけるためには「いろんなことをくどくどと考えて考えて、行ったり来たりしながら時間をかけて考え抜く」ことが大事なのだ。
「それができるのが小心者のいいところなんです」と笑う。
かつてブリヂストンがアメリカのファイアストンの買収を検討した際に秘書課長として家入社長(当時)を支えた荒川氏は、今も当時の家入氏との会話を思い出すことがある。
「あの頃日本企業は巨大なM&A案件なんて、ほとんどやろうとしなかった時代です。ファイアストン買収は、当時最大の買収として世間を騒がせることになりました。
外から見ていると、豪胆な決断に見えたかもしれませんが家入さんは非常に緻密な方でいろんなケースを延々何十年も考えてきて、その結果としての判断だった。世界に伸びていくためにはこれしかない、と大型買収に踏み切ったのです」
当然、他にも買収の提案はいくらでもあった。
荒川氏も「他にもあるじゃないですか?」という質問を何度か投げかけたこともあったという。
「でもそのたびに、きちんとした完璧な回答が返ってきました。すべてを考え抜いた結果としての決断なのだな、と最後には誰もが納得できたのです」
今思い返しても、「あの時の買収が無かったら今のブリヂストンはない」と感じるという荒川さん。
「小心者でびくびくしているからこそ、最終的には大きな決断もできるんですよ」ときっぱり言った後に、いたずらっ子のような表情で付け加えた。
「まさに、"石橋"を叩いて渡るですよ(笑)」
トラブルは"順調に"起こる!?
荒川氏の小心者リーダー論はまだまだ続く。
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