経営戦略構文100選(仮)/構文22:ファイブフォースモデルと基本戦略

画像: ぱくたそ

2018.03.08

経営・マネジメント

経営戦略構文100選(仮)/構文22:ファイブフォースモデルと基本戦略

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。

現実が完全競争のモデルに近づかない要因がいくつかあり、それが業界によって違う。その要因を壁のようにイメージして、構造と呼ぶ。ポーターがファイブフォースモデルを称して言う「構造分析コンセプト」は素直な発想で作られています。

そして、その構造において、典型的に収益を生じさせる要因が、大きくはミクロで言う代替性の問題、いわゆる競合関係の問題でしょうし、売り手と買い手の交渉力の問題であることは容易に気が付きます。

交渉力の問題は、プライステイカーの前提がいかにゆがむか?にクリティカルです。参加者は価格交渉を全くしない。完全情報でみんながすべての情報を知っているはずなので、世の中で一番安いところから買います。これが情報の非対称性やら、交渉の存在やら、参加者の制限などによって歪むということですね。

この2つの軸、代替性と交渉力をクロスさせると、ファイブフォースの出来上がりです。ロジックで考えると、ずいぶんシンプルです。

代替性とはまさに、競合の激しさですし(競争業者間の競争の激しさ)、それは参入障壁が低ければ低いほど、参加者が増えて激しくなってしまいますし(新規参入の脅威)、違うはずの財が同じような便益提供を行い、コストパフォーマンスが優れているなら困りますし(代替品の圧力)、サプライヤーがほとんどいなくて、自社が欲しい部材がなかなか買えないなら困りますし(サプライヤーの交渉力)、お客さんがほとんどいなくてなかなか買ってもらえないから困ります(買い手の交渉力)よね・・・。

そのうえで、現実と理論のコストビヘイビアの乖離を加えて、モデルは精緻化されています。

繰り返しになりますが、ポーターの考え方では、ミクロと現実の乖離が問題になります。これは誰でも指摘しています。しかし、あまり指摘する人がいないのが、コストビヘイビアにおける経済学と現実の乖離ですね。当たり前すぎるからかもしれません。

経済学ではコストは「逓増」すると考えます。「たくさん作れば作るほどコストは上がる」前提です。だから、収穫は逓減し、最適生産点が存在する。多数の参加者の同じ振る舞いを経て超過利潤はゼロとなる。利潤はリスクフリーレートにしかならない。

しかし、現実の製造業はモデルと違って、規模の経済性が存在し、経験曲線なるメカニズムもあることがわかりました。この2つの要因によって、完全競争市場と現実のコストビヘイビアは乖離します。

多くの製造業において限界費用はゼロに近づくわけです。最適生産点など存在しない。作れば作るほど限界費用と平均費用は低下します。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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