漂流上手が良質なキャリアを築く。(【連載2】新しい『日本的人事論』)

画像: Daniel Jolivet

2018.02.15

組織・人材

漂流上手が良質なキャリアを築く。(【連載2】新しい『日本的人事論』)

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。

●「大まかな方向性」は、どうすれば見えてくるか。

まず、目標と方向性はどう違うか。目標と言えば「SMARTの法則」が有名だ。これに従えば、①Specific(具体的)、②Measurable(測定可能)、③Achievable(達成可能)、④Related(全体や周囲の目標と関連がある)、⑤Time-bound(時間の制約や期限)の5つの要素を満たしているのが良い目標である。これら5つの要素を盛り込むことによって、単なるスローガンや気合や心がけとは違って、現実に実行されるし、達成・非達成が明確になるからPDCAを回していける。

しかし、キャリアは常に、自分の意思や努力では如何ともしがたい環境変化や組織上の要請に左右されてしまうため、このようなしっかりした目標設定はそもそも現実的ではないし、思い通りになっていない状況が、むしろ分りやすくなってしまうのでストレスを生みやすい。だから、「目標」ではなく「大まかな方向性」で構わないというのが、キャリア・ドリフトの言わんとするところだ。

方向性は、目標の5つの要素の中から、①Specific(具体的)、②Measurable(測定可能)を取ったものと考えればよいだろう。つまり、明確な数字で表すことによって達成したかどうかが正確に測定できるようなものにする必要はない。この2つがなければ、多少うまくいかないことがあっても焦らなくてすむはずだ。だから、キャリアを考える際の「大まかな方向性」は、③Achievable(達成可能)であって空想や野望のようなものでないこと、④Related(全体や周囲が目指すところと関連がある)なので支援や共感が得られる、という要素を満たした上で、ある程度の時間的な目処を立てている(⑤Time-bound)ということになる。キャリアの方向性は、ARTの3要素を考えればよい。

ここまで見てきて分るのは、上手な漂流には周囲との良好な関係が欠かせないということだ。キャリアは自分だけで作るものではないし、自分の努力だけで出来ていくものでもない。他者との良好な関係があって初めて、前向きに自信を持って流されていける。良好な関係にある他者からの期待や多様な機会が、振り返るに値する経験となって積み重なる。今後の方向性を定めるにも、全体や周囲が目指すところとの関連が大切だ。周囲との良好な関係の構築・維持が、優れたキャリア形成につながっていくのである。

【次回に続く】
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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長 /一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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