筆者が小切手の存在を知ったのは、子どものころ見たテレビドラマでした。 会長、社長と名のつく人が、“口止め料”や“手切れ金”として、サラサラっと数字を書き込んで相手に渡すシーンだったのです。しかし、現在のドラマでは、あまりそうしたシーンを見なくなったように感じるのは筆者だけでしょうか。 さらに約束手形については、子どものころに夢中になった「人生ゲーム」で、たくさん持たされた赤い紙幣を通して、手形の存在を知ったのです。その赤い紙幣が増えるにしたがって「自分は“貧乏農場”に行かなければいけないんだ」という恐怖心を感じたものです。 さて、そんな子ども時代に思いを馳せながら、小切手は金持ちだからもてるのか、手形は本当に怖いのかを調べてみました。
そもそも小切手、手形って?
小切手は、端的に言えば「現金と同じ」です。券面に記載された日付にかかわらず、銀行においてただちに現金化することも、他人に譲渡することも可能なもの。それに対して約束手形は、券面に記載された約束期日がくるまで現金化することができません。
小切手や手形を振り出す(発行することをこう言います)には、当座預金口座が必要です。近年では、当座預金口座を個人が開設することは非常に困難で、ほとんどは法人が開設します。また、当座預金口座は誰でも開設できるわけではなく、「この法人なら、振り出した小切手や約束手形が不渡りになることはない」と、銀行が厳しい審査を通じて確信しない限り開設はできません。
振り出す側は、なぜ小切手や手形を使うのか
普通預金には、法人でも1日1000万円の引き出し限度額があります。当座預金口座を開設してあれば、大きな現金を持ち歩かなくても、その場で1億円でも2億円でも残高さえあれば決済が可能です。大きな現金を持ち歩く必要もありません。それに加えて手形の場合は、3カ月後、6カ月後など、券面に記載した期日まで支払いを伸ばすことができます。
不渡り手形とは?
約束手形の場合は、満期日=支払期日に当座預金口座に1円でも足りなければ不渡りとなります。小切手の場合も、振り出した金額分が当座預金になければ不渡りとなります。半年以内に2回不渡りを出すと、2年にわたって銀行取引が停止され、世に言う「倒産」という事態になります。よく調べてみると、法律上は、不渡り=回収不能ということではありません。満期日から3年間は手形の振出人に支払いが請求できます。
不渡りを出したベンチャー企業・U社のケース
上記の通りルールの概要はわかりましたが、実際にはどのように運営され、どのようなリスクがあるのでしょうか。ここでそのリスクがわかる形のわかりやすい例を挙げて考えてみましょう。
新規事業を立ち上げることに
ベンチャー企業のU社は飲食業で急速に売り上げを伸ばしており、取引銀行も期待値を含めて当座預金口座の開設を認めました。U社の社長は新規事業として、海の家を運営することとし、工事業者A社に建物をシーズン終了後の撤去費用も含めて、3500万円で発注しました。海の家ですからひと夏の勝負ですが、工事の発注は3月のことです。そこで、小切手で頭金500万円だけをA社に支払い、残金は「9月になれば、シーズンが終了しているので売り上げの中から払えるだろう」と考え、6カ月手形を振り出しました。
次のページ最後に、なぜそんなことになったのかを検証
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