コンセプチュアル思考〈第17回〉 類推~物事の核心をとらえ他に適用する 

画像: Career Portrait Consulting

2016.12.15

組織・人材

コンセプチュアル思考〈第17回〉 類推~物事の核心をとらえ他に適用する 

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ

米国の評論家・歴史家であるルイス・マンフォードは、『現代文明を考える』(生田勉/山下泉訳、講談社学術文庫)のなかで、この寓話を取り上げ、こう記しています───

「大量生産は過酷な新しい負担、すなわち絶えず消費し続ける義務を課します。(中略)『魔法使いの弟子』のそらおそろしい寓話は、写真から美術作品の複製、自動車から原子爆弾にいたる私たちのあらゆる活動にあてはまります。それはまるで、ブレーキもハンドルもなくアクセルしかついていない自動車を発明したようなもので、唯一の操作方式は機械を速く働かせることにあるのです」。

一つの寓話から引き出す内容、当てはめる先は、人それぞれに異なります。それを描いたのが次の図です。このように、ある物事から見出した本質を類似性によってほかの物事に広げ適用していくのが類推です。類推もまたコンセプチュアル思考の特徴である「π(パイ)の字思考プロセス」をとります。

こうした類推の形をとった思考形式はそのほかにもたくさん見うけられます。例えば、MBA(経営学修士課程)でよく行われているケーススタディ。ある企業の成功(あるいは失敗)事例を研究し、成功(失敗)の本質的要因を探り出し、自身が担当する事業との類似性を通して成功(失敗回避)法をおしはかっていく学習法です。これも類推という知的なはたらきを利用しています。また、ある企業において一つのビジネスモデルが成功すると、そのモデルを他の事業にも横展開しようとします。そのときの思考もπの字プロセスを経る類推です(下図)。

さらに広げて考えると、生体模倣 (バイオミメティクス)もそうでしょう。生物のからだには、長い時間をかけて自然に適応してきたさまざまな知恵があります。その原理を引き出して、人間が使う道具に応用する(下図)。これもまた類推という思考の産物です。



(次回に続く)



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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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