​暴力団との正しい“付き合わない方法”

2016.07.17

経営・マネジメント

​暴力団との正しい“付き合わない方法”

山岸 純
弁護士法人ALG&Associates 弁護士・税理士

複雑化したビジネスシーンでは、知らないうちに暴力団関係者と知り合っていたり、取引をしていたりすることも少なくありません。 近年、暴力団に対する締め付けはとても厳しくなる一方で、これらに協力する者も法令により厳しく取り締まられるようになりました。 そこで、日々のビジネスシーンにおいて、万が一、暴力団関係者と出会ってしまった場合の正しい“付き合わない方法”を解説していきたいと思います。

実は、東京都暴力団排除条例24条3項は、暴力団の「助長行為」や暴力団に対する「利益供与」を禁止しています。

このうち、「利益供与」とは、具体的には、

  • 飲食店経営者などが、暴力団員が経営する事業者であることを知りながら、当該事業者から、おしぼりや観葉植物などのレンタルサービスを受け、代金を支払う行為、
  • 風俗店経営者などが、暴力団員に対し、「みかじめ料」を支払う行為、
  • ゴルフ場経営者が、暴力団が主催していることを知って、ゴルフ・コンペ等を開催させる行為、
  • ホテルなどの宴会場やイベントスペースの経営者が、暴力団組長の襲名披露パーティーに使われることを知って、ホテルの宴会場やイベントスペースを貸し出す行為、
  • 不動産業者が、暴力団事務所として使われることを知った上で、不動産を売却、賃貸する行為、
  • スポーツや演劇などの興行を行う事業者が、相手方が暴力団組織を誇示することを目的としていることを知った上で、その暴力団員らに対して特別に観覧席を用意する行為、
  • 警備会社が、暴力団事務所であることを知った上で、その事務所の警備サービスを提供する行為、
  • ウェブ制作会社が、暴力団のフロント企業であることを知った上で、そのウェブサイトを制作する行為、

などをいいます。

これらの行為は、たとえビジネス的に「対等な取引」であったとしても、「ビジネスの相手方が暴力団であると知っていながら、これらの活動によって、暴力団の利益となる取引・行動を行った場合」、「利益供与」と判断されてしまう可能性があります。

そして、東京都公安委員会は、このような「利益供与」を行った事業者に対し、そのような行為を止めるよう「勧告」を行ったり、「勧告」を行ったにも関わらず短期間に繰り返し同様の行為を行った事業者などに対しては、「事業者が当該行為を行ったという事実」や「勧告を受けた事実」を「公表」することができます。

要するに、暴力団とは「取引をしない」のが一番です。

しかし、彼らは巧みに素性を隠して、あらゆるビジネスシーンに割り込んできますので、知らないうちに暴力団と取引をしてしまっているケースも少なくありません。

そこで新しい取引に際しては、契約書に予め「暴力団排除条項」を盛り込んでおくことが大切になります。

既に不動産関連や建設関連の標準約款に盛り込まれている「暴力団排除条項」ですが、これがあることで、「事前に暴力団関係者かどうかを確認した」ことの説明にもなりますし、事後に取引の相手方が暴力団と判明しても、警察や公安委員会に相談するきっかけとすることができます。

また、現在では、弁護士に相談したり、業界団体に相談することで、事前に「暴力団員」かどうかを判別することができる仕組みも構築されています。

このように、新しい取引に際しては、どんなに優しい顔をしている相手方であっても、まずは暴力団、暴力団関係者かどうかを確認する、これが暴力団と“付き合わない方法”の第一歩です。

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山岸 純

弁護士法人ALG&Associates 弁護士・税理士

専門は企業法務ですが、国境を越えた家族問題やマンション管理問題など、幅広い分野に取り組んでおります。 時事ネタをくだいてくだいて解説するのが大好きです。 現在、宮内庁における外部通報業務に奉職中。

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