複雑化したビジネスシーンでは、知らないうちに暴力団関係者と知り合っていたり、取引をしていたりすることも少なくありません。 近年、暴力団に対する締め付けはとても厳しくなる一方で、これらに協力する者も法令により厳しく取り締まられるようになりました。 そこで、日々のビジネスシーンにおいて、万が一、暴力団関係者と出会ってしまった場合の正しい“付き合わない方法”を解説していきたいと思います。
1 はじめに
かつては、建設業界や不動産業界、風俗業界を中心に跋扈していた暴力団の方々ですが、近年では芸能事務所や金融関係、最近ではゲーム・アプリ開発や介護業界にも関与しているという噂を聞きます。
他方で、近年、暴力団に対する締め付けはとても厳しくなっており、テレビ司会者として人気を誇っていた島田紳助氏が指定暴力団の幹部と不適切な交際を行っていたことが原因となって芸能界を引退することになるなど、暴力団そのものではなくても、これらに関係したり、暴力団との関係をウワサされただけで社会的に封殺されることも、ままあるようです。
とはいえ、芸能人や企業の経営者などが、その社会的地位からはなれ、個人的に、一人の知人として暴力団関係者と食事をしたり、ゴルフをしたりすることが、果たして、他人に対し具体的に何かの迷惑や害悪を与えるのか、と問われれば、疑問を感じないでもありません。
そこで、日々のビジネスシーンにおいて、万が一、暴力団関係者と出会ってしまった場合の正しい“付き合わない方法”を解説していきたいと思います。
2 法令の理解
まず、暴力団を巡る法令環境について正しく理解する必要があります。
(1)暴力団対策法
正式名称「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」は、暴力団員による暴力的な要求行為を規制し、市民生活の安全を図ることなどを目的として制定された法律です。
この法律は、特に、暴力団員が人の弱みにつけ込み「口止め料」を要求したり、「寄附金・賛助金・用心棒代」といったよく分からない金銭を要求したり、理由がないのに「下請業者」として参入することを要求したりする行為を「暴力的要求行為」として類型化して、これらの行為が行われた場合、警察署長に対して当該行為を禁止する命令(中止命令)を発することができるようにしています。
また、平成20年5月には、いわゆる“舎弟”や“子分”が「暴力的要求行為」を行った場合、その“兄貴分”や“親分”も中止命令の対象としたり、また、“子分”らによる「暴力的要求行為」について、“親分”らにも損害賠償責任を課したりするなどの法改正が行われております。
要するに、法律をもって、“子分”の不始末を“親分”が負担するようにしたわけです。ちょっと笑えますね。
暴力団の世界では、「上の者」に迷惑をかけることを極めて嫌う体質がありますので、こういった独特の関係を利用して暴力団による「暴力的要求行為」などの封じ込めを狙っているわけです。
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2016.08.04
2009.02.10
弁護士法人ALG&Associates 弁護士・税理士
専門は企業法務ですが、国境を越えた家族問題やマンション管理問題など、幅広い分野に取り組んでおります。 時事ネタをくだいてくだいて解説するのが大好きです。 現在、宮内庁における外部通報業務に奉職中。
