英国のEU離脱からわかった3つの気づき

画像: Norio NAKAYAMA

2016.06.30

経営・マネジメント

英国のEU離脱からわかった3つの気づき

野町 直弘
調達購買コンサルタント

先週末英国の国民投票でEU離脱派が過半を取りました。 我々はここから何を学ぶべきでしょうか?

ちなみに移民と難民は違うものです。難民というのは自国の政治上の問題から身の危険があり逃げざるを得ない人達のことを指します。シリアから多くの人がヨーロッパに逃げてきているのが難民であり、どうしてもそのシーンを想像してしまいますがそれは移民の問題とは直接結びつきません。

それでは今回の件からの気づきは何でしょう。

労働力人口の増減はその国の経済環境に極めて大きな影響をもたらすということは言うまでもありませんし、ドイツなどは1972年より人口が自然減の状態であるのに対し移民の純流入によりその減少をカバーしています。また、人の移動にともなう労働力流動の自由はEU法の4つの自由にも上げられており、「最適通貨圏の理論」から考えても経済学的には正しいでしょう。しかし「経済学だけで世界が動いている訳ではない。」というのが一つ目の気づきです。

先ほどの移民に仕事が奪われているかというアンケート調査結果もそうですし、ドイツの意識調査でも移民は問題か、それとも機会拡大をもたらしているか、という設問に対して問題だと答えた方の比率が英国では64%にも上っています。このように様々な誤解や認識不足はあるものの移民や労働力の移転に対してネガティブな印象があることは紛れもない事実です。

2点目は労働力移動は極めて容易に起こり得る、ということです。これは実際に圧倒的な勢いでEU域内で後進国から先進国への人口移動が行われていることからも言えます。
EU域内では資本の移動の自由も基本原則になっていますが、資本の移動なんかより圧倒的なスピードで人は移動するものです。これはインターネットによる情報伝達スピードや物的流通のスピードアップにより世界が小さくなったことも要因となっています。人の移動は従来に比較するとそれほど高いリスクを感じることもなく、実際に移り住むことも、もはや大きなハードルではなくなった、ということです。

3点目は労働力人口の政策的なコントロールは極めて難しいということ。現状日本では全人口の自然減が始まっており、労働力人口を増加させるために女性や高齢者の活用や出生率を上げることを政府は目指しています。しかし現状の日本の社会の中でこれらの全員が活躍できるような機会を作っても限界があるでしょう。
一方移民を受け入れるとなった場合には、どのような目的でどこからどのような人を受け入れていくか、というしっかりした政策があっても(実際にEUにもブルーカード制などがありますが)中々流出入をコントロールすることは難しいということです。

これらの3つの気づきは日本の今後の経済政策を考える上でも役に立ちます。
私は日本は今後の経済成長や活力を向上させるためにもっと移民を受け入れるべきだと考えています。その上で現状の英国をはじめとしたEUの状況を参考になる機会として捉えるべきでしょう。


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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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