「顧客紹介」のメカニズムを考える

2008.01.23

営業・マーケティング

「顧客紹介」のメカニズムを考える

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

ある眼鏡店からダイレクトメールが届いた。受け取り拒否の意思表示はしていないので、特に問題のあることではない。セールか新作の案内かなと思ったが、ハガキには「お友達を紹介してください!」と書いてあった。

「お友達を紹介してください」は、よくある「顧客紹介プログラム」で、珍しいことではない。紹介すると、紹介者に金券などの謝礼が与えられるのが一般的だ。「人をだしに使う」というような負い目を感じさせないように、最近では被紹介者(友人)にも同等の金券などの特典が与えられる互恵的なプログラムが一般的になっている。
しかし、そのハガキを見たときの筆者の感想は「なぜに君の店を人に紹介せねばならないのか?」というものだった。

眼鏡マニアでもある。実に10個近い眼鏡を持っている。自宅近くの店をよく使っているが、街を歩いていて気になる眼鏡を店頭で見かけると作ってしまう。そんな店の一店からであった。その店で眼鏡を作ってから数ヶ月、最初のコンタクトが「お友達を紹介してください」だ。

知人を紹介するという行為を安易に考えている企業が多い。「お友達紹介キャンペーン!」などは一般的になっているが、あまり効果は上がっていないのではないだろうか。
紹介行為にはリスクが伴う。例えば、お気に入りの飲食店を友人に紹介したとしよう。
その店に行った友人に、「どうだった?」と聞くと、友人はあまり快適な経験をしなかったという。どうだろう、ちょっと気まずくないだろうか。こんなことは最も小さなことだが、ノーリスクではない。

しかし、筆者は自身の生命保険の営業担当者に、過去数名知人を紹介している。保険という、プライバシーに関わる商材に関する紹介はかなりリスクがあるといっていいだろう。しかも、紹介しても謝礼などはない。
では、少しでも保険に関心のあるという知人に、「いい担当者がいるんだけど」などと紹介をするのか。そこが、「顧客紹介のメカニズム」の要諦だ。
答えは、「その担当者の日頃の対応に非常に満足しているから」。もっというと、「日頃から何かと気にかけてくれている担当者に感謝しているから」。「感謝しているから、こちらからも何かしてあげたくなるから」である。

顧客が紹介行為をしてくれる原動力は「ロイヤルティー」だ。
どんな顧客にも一律、「紹介キャンペーン」などやっても無駄なのだ。いや、むしろ顧客の心証を害する場合もある。件の眼鏡店も、まずは「ご購入いただいて1ヶ月経ちますが、眼鏡の具合はいかがですか。調整にご来店なさいませんか」といった所から、コミュニケーションを進めていれば、いつしかロイヤルティーが高まって、筆者も知人を紹介したかもしれない。
物事には段階がある。紹介を受けたいなら、顧客との距離を縮める努力が必要だ。今回の事例を整理するために、簡単なチャートを添付する。(図参照)フィリップ・コトラーは顧客進化を6段階のフレームワークで表したが、より簡単に3段階でまとめてみた。
よりよい顧客との関係構築のために参考になれば幸いだ。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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