品格よりも粗にして野であれ:品格時代のお勧め本

2008.01.11

ライフ・ソーシャル

品格よりも粗にして野であれ:品格時代のお勧め本

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

Amazonのおすすめで、「女性の品格」が表示された。 この本の読者は8割が女性だというが、何かの間違いか、過去に藤原正彦の「国家の品格」を購入したからだろう。 しかし、ふと気になり、Amazon内の「品格本」を検索してみた。 あるわあるわ。 本>”品格” 検索結果208件。品格ブームとはいわれているものの、すごい数だ。 そこで、この品格ブームの正体を少し考えつつ、ある本を最後にお薦めしたい。

「品格」という言葉の意味を辞書で調べてみる。広辞苑 第五版。
【品格】品位。気品。
関連した言葉も調べる。
【品位】人に自然にそなわっている人格的価値。ひん。品格。
【気品】どことなく感じられる上品さ。けだかい品位。
【上品】ひんのよいこと。気品のあるさま。
ざっくり言うなら上品かどうかということ。「女性の品格」は、挨拶をきちんとする。タダのものをむやみにもらわない。色恋の話をすぐにしない・・・などなどが書いてあるようだ。やはり上品であるにはどうあるべきかという論と言えるだろう。
「国家の品格」は武士道を基軸に「卑怯(ひきょう)な振る舞いをしてはなりませぬ」「弱いものをいじめてはなりませぬ」などの心得を説いているので、単純に上品かどうかというレベルを少し超えているが。

しかし、なぜ日本中でこんなに品格品格と言われるようになってしまっているのか。
「衣食足りて礼節を知る」と言われるが、格差社会、ワーキングプア問題などがある中で、「自分は十分大丈夫だし、やはり次は礼節か」という、いわゆる勝ち組負け組の、自らの勝ち組証明として「品格」を心がけようとする動きなのだろうか。

しかし、本来「品格」などは自らの基準に照らし合わせ、品格あるべき行いをしようと律すれば良いことのはずだ。それが何百万冊も売れてしまう。
そもそも品格という曖昧模糊とした、基準なき概念に正解などないはずだが、正解を探したくなるのが現代人の性。それが、マニュアル的に「品格本」が売れる理由ではないだろうか。

品格本は悪くない。それを読むことも悪くはない。事実、自分だって「国家の品格」を読んだ。
しかし、品格だけではなく、もう少し別の考え方をしてみても良いのではないかと思う。
そこで、お薦めの本だ。

「粗にして野だが、卑ではない」
昨年亡くなった経済小説家、城山三郎が記した第五代国鉄総裁、石田礼助の生涯である。
石田礼助は自らを「ヤング・ソルジャー」と称して、初の財界出身総裁というハンデをものとせず、改革に辣腕を振るった人物だ。その卑とならず、高い志を貫き通した生涯からは、品格だけでは語れない高いプライドが学べ、本当の経営者のなんたるかがわかる。

もう一つ城山三郎作品。
「男子の本懐」
命をかけて、金輸出解禁、金本位制復帰の改革によって、経済建て直しを図った浜口雄幸首相の生き様を記した作品だ。こちらは本当の政治家たる姿を伝えてくれる。

「品格」に飽きた人には、一読されることをお勧めしたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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