「人の役に立ちたい」という志望理由がダメな理由

2015.09.01

組織・人材

「人の役に立ちたい」という志望理由がダメな理由

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

「人の役に立ちたい」「社会貢献のために御社を志望しました」新卒学生のエントリーシート・志望動機では限りなくよく使われる言葉ですが、中途入社の30代の方のものでもたまに見かけます。人の役に立つことが悪いのではもちろんありません。思考停止がダメなのです。ではなぜ「人の役に立つ」と書くことが思考停止なのでしょう。

高偏差値大学生は、「社会貢献と答えるのが『正解』らしい」という、正解導き能力の高さからこれらを語る率は高いのでしょう。しかし就活や採用に正解がないという、キャリアの根本を理解していないことがバレれば、どれだけ高名な学歴を誇っていても評価にならないのです。まして社会人経験のある人間が、転職において具体的な応募理由も説明できないのであれば、評価されることは難しいでしょう。


・お金について真剣に学ぶことがキャリア教育
私は大学生、大学院生向けの講義をたくさん行ってきましたが、最近は高校生や先日初めて中学生にまでキャリアのお話をしてきました。そこで語るものは「夢の実現」とか「いつか希望はかなう」といったファンシーなものではなく、お金の話です。

経済学を学んでいようといまいと、経済活動抜きに生活できる人はいません。完全に自給自足生活で、電気も水道も不要な原始生活を送らない限り。「やりたいことをする」のはキャリアではなく趣味です。やりたいことを継続して行うためには、それを維持するためのコストを稼ぎ出し、日々を生き、直接間接を問わず社会生活を送らなければなりません。要はご飯を食べて寝て暮らすことを、瞬間ではなく、継続できなければキャリアではないのです。親に養われていながら好きな暮らしをするのはキャリアではありません。

芸術家や芸能人も「自称」だとしたらキャリアではなく、趣味です。真剣にどうすればお金がまわるのか、その活動を継続できるのかを考え、社会ニーズが多い、増えている、直接困った人を助けるだけでなく、たとえば金融のようにインフラを通じて間接的に人を助けるというような、広い視野でビジネスをとらえられる志望動機こそ、現実感をもって受け止められるのです。

過去の面接練習で「御社最大の事業○○をきわめてお金を稼ぎたい。そして生まれ育った△△市に支店を出したい」と志望動機を語った女子大生がいました。しっかりしたその企業研究ができているからこそ言えることであり、説得力も十二分にあります。なにより、有名なお嬢様女子大の学生の口から「お金を稼ぎたい」という言葉が出て、関心を持たない訳がありません。筋の通った志望理由をしっかり語れる人は何より魅力があります。実際数週間後に、その超人気企業の内定を得たと報告があった時は、心底納得できました。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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