天国へのお引越し

2007.12.25

ライフ・ソーシャル

天国へのお引越し

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

ある老人の遺品を整理していた吉田太一氏に、 そのおじいさんのお孫さんが尋ねてきました。 「おじさんたち何してるの?」 まだ小学1-2年生くらいの小さい子供に 「遺品整理」 という言葉は難しいだろうと 「亡くなったおじいさんの荷物を整理してるんだよ」 と応えると、その子はこう言ったそうです。

「じゃあ、おじさんたちは、
 天国へのお引越しをお手伝いしてるんだね!」

吉田太一氏は、全国初の「遺品整理」の専門会社、

「キーパーズ」
http://www.keepers.jp/

2002年に立ち上げた方です。

「遺品整理」は文字通り、
亡くなった方の自宅や部屋の物を整理し、清掃し、
形見の品を遺族に渡して、残ったものを処分する仕事です。

マスメディアでもたまに取り上げられていますので、
ご存知の方もいらっしゃるでしょう。

亡くなった方の多くは「孤独死」です。

孤独死した人の親戚縁者は
おおむね故人とは疎遠だったために、
自分では遺品整理をやりたがりません。

そこで、キーパーズのような会社に
お金を払って依頼するというわけです。

独居老人などが「孤独死」した場合、
身内がどこにもいないこともあります。

このような場合には、
部屋を貸していた大家さんが仕方なく、
遺品整理を依頼することが多いようです。

また、「自殺」や「他殺」によって亡くなった方の
遺品整理の仕事もあります。

この場合もやはり、
遺族が自分で遺品整理するのは難しいため、
遺品整理会社に依頼が来るようです。

現場では、
もちろん遺体は既に運び出されていますが、
血が飛び散っていたりする凄惨な状況の中で
遺品整理や清掃の作業をすることになります。
(だから、心情的にも遺族がやるのは難しいわけです)

遺品整理の仕事は、
想像するだけでも大変な仕事だなと思いますが、

「自分たちがやらなかったら誰がやるんだ」

という強い使命感で、
吉田さんたちは仕事を引き受けています。

現在では、キーパーズのような
遺品整理の会社は全国に30社くらいあるそうです。

高齢化が進み、独居老人が増加していいる現代、
遺品整理業の方がますます忙しくなることは確実ですね。

もちろん、自殺や他殺による仕事が増えることは、
遺品整理業の方も望んでいないでしょう。

最近は、独居老人の方で、

「生前予約」

をされる方が増えているそうです。

今は元気だけれど、いつ突然死んでしまうかわからない。

その時、身内や周囲の人に迷惑をかけたくないと、
あらかじめ遺品整理の見積もりを取り、代金を払って
その時に備えておきたいということなのだそうです。

生前に「墓」を購入しておくだけでなく、

「遺品整理」

までも、死ぬ前に、
赤の他人に依頼してきたいと考える人が増えている。

これは、人間関係がますます薄くなっている現代を
反映していると言えそうですよね。

ところで、吉田太一氏の著作、

次のページ『遺品整理屋は見た!』(扶桑社)

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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