2007年は「鉄」にとって変革の年だったのか?

2007.12.27

ライフ・ソーシャル

2007年は「鉄」にとって変革の年だったのか?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

何を隠そう、筆者は少しばかり「鉄」である。「鉄」つまり、「鉄道ファン」だ。 その鉄にとって2007年はちょっと特別な年であったように思う。 今年を振り返りつつ、最後にイノベーション論で読み解いてみたい。

「鉄」は昨今注目される”Cool Japan”、つまり日本独自のサブカルチャー的「オタク文化」とは少し様相が異なる気がする。日本独自という意味では、ほとんど独自性はなく、世界的にも「レール・ファン(Rail Fan)」という人々があちこちに存在する。歴史的にも新しいものではなく、その始まりは昭和初期とか、SL時代とか諸説ある。

「鉄」は同じ鉄道というものを対象としつつも、その関心領域によって多彩なバリエーションがあることも特徴だろう。
鉄道に乗車しまくることを喜びとし、青春18切符を使い倒したり、片道切符で最長距離に挑んだりする「乗り鉄」。鉄道の写真を撮りまくる「撮り鉄」、走行音や発車音を録音する「録り鉄」。時刻表を多々時も離さない「時刻表鉄」。列車の車両研究の「車両鉄」などなど・・・。挙げればきりがないほどだ。
ちなみに筆者は「車両鉄」と「乗り鉄」の変形版、「新幹線鉄」とでもいおうか。開業間もない東海道新幹線が見える公園で幼少期に遊んでいた影響かもしれないが、新幹線専門だ。

ともあれ、そんな鉄にとっても2007年は特別な年ではなかっただろうか。
何といっても、10月14日の鉄道の日に「鉄道博物館」が開館したことは大きな出来事だ。
その前身の秋葉原にあった交通博物館も子供時代、何度も胸をわくわくさせて通ったものだが、今度は規模も、投入されているテクノロジーも桁違い。また、交通博物館時代は他の交通機関の展示と混在であったが、今度は何といっても鉄道オンリー。正に鉄道ファンの「聖地」と呼んでもいい。聖地を手にした集団はやはり勢いづくものだ。

2007年が特別なのは鉄道博物館開館だけではない。ファン層が拡大した年でもあろう。
前述の鉄道博物館オープニングセレモニーでテープカットをつとめたのは女優の吉永小百合さん。JR東日本「大人の休日倶楽部」のイメージキャラクターでもあるが、セレモニーの挨拶で鉄道への思いを語り、吉永小百合=鉄道ファン説がささやかれている。
鉄道ファンの女性は「鉄子」とも呼ばれるが、女性にファン層が広がれば、ファンのほとんどが男性という男臭いイメージが払拭できようというものだ。

さらに年齢層も拡大している。2007年は団塊世代の大量定年元年だが、リタイヤ後の趣味として「乗り鉄」や「撮り鉄」になった人も多いようだ。定年後の消費で「国内旅行」や「デジタル一眼カメラ購入」が実は「鉄がらみ消費」であるという説だ。また、その世代は「永遠の吉永小百合ファン」である「サユリスト」も多いため、吉永小百合=鉄子説が彼らの背中を押したのかもしれない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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