サービスサイエンティストとして、サービスの本質的な理論を提唱し続ける松井さんとパナソニックで実際にCX・CSに向き合い、お客様へのサービスを提供されている今村さんをお迎えしてお話を伺っていきたいと思います。 (聞き手:猪口真)
第3回 「物心一如の繁栄」という思想を忘れずに発展したい
今村 佳世様(パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 常務 CX担当、CS担当)
松井 拓己様(サービスサイエンティスト・松井サービスコンサルティング 代表)
猪口 サービスサイエンティストの松井さんとパナソニックCS、CXを担当されている今村さんにお話しをうかがっていますが、前回は、テクノロジーとコンテンツがマッチし、行動変容を起こすプロセスをご紹介いただきました。
現代はサービスの重要性が本当に大きくなっているのですが、それには、あくまできちんとした製品であることが前提になりますね。
今村 そうなんです。私たちパナソニックは100年かけてそれに命がけで取り組んできました。昭和初期にはまだ十分ではなかった品質を高め、大量に広く供給できるレベルまで上げてきました。
猪口 かつて住宅の品質が低かった時代は、クレームが怖くて、売ったら絶対にお客様のところへは行かなかったという話を聞いたことがあります。今はレベルが上がって一緒にくらし方をつくっていますから、これも同じ話かもしれませんね。
今村 なるほど。つまり、日本全体のモノづくりの質が上がってきたからこそ、次のチャレンジがあるということですね。
松井 両面ありそうですね。品質が悪ければそもそも話にならないというのは、カスタマーサクセスにも通じる考え方です。質が上がってきたからお客様との接点にポジティブになれる。それと同時に、質が上がったからこそ、質やスペックでは差がつきにくくなって、サービスに伸びしろができたのでしょうね。
今村 今回のサービスが実現した背景には、パナソニックが100年間のモノづくりで培ってきた膨大なデータベースがあります。ハードウェアを開発する際、どうやったらもっと美味しいものがつくれるか徹底的に研究してきました。当社には「Panasonic Cooking@Lab」という研究施設があるのですが、炊飯器の1機種が完成するまでに約3トンのお米を食べています。1日2、3合のお米を食べて、夜はもうおつまみしか要らない。そんな日々を積み重ねてきたわけです。

猪口 たしかにサービスは大事ですが、やっぱり一番はしっかりしたモノづくりですね。
今村 ハードウェアのナレッジもあれば、実際に食べて研究している人たちもいる。かたさや食感、エリアごとの味の違いまで、3トン分を食べて蓄積してきたデータベースがあるからこそ、お客様の期待に応えられるのです。
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