今年の振り返り:一番の映画はこれ!

2007.12.24

ライフ・ソーシャル

今年の振り返り:一番の映画はこれ!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

今年もいよい残り少なくなり、様々なことを振り返る時期になってきた。 まずは、年末休暇も目前なので、今年一番の映画について記したい。

米国人夫婦は言葉の通じない異国・モロッコに放り出される。同じくその子供達も言葉の通じないメキシコでトラブルに遭う。確かにここは「言葉が通じない」という点でタイトルの意味を想起させるが、実はそうではない。
通じていないのは「言葉」ではなく、「心」なのだ。
別の言い方をすれば、「心が通じていない」は「コミュニケーションが成立していない」のである。
この点は後述するとして、映画の中身を整理する。

米国人夫婦は過去に夫婦を襲った悲劇から、夫が逃げるように心を遠ざけていた。関係修復のために夫婦でモロッコを訪れるが、二人の心は通じ合わない。
また、夫婦は子供を大切にしていると言いながらも、実際には乳母に預けきりで、十分親子の心が通じていない。
その使用人であるメキシコ人乳母とは信頼関係が結ばれているように見えるが、一皮むけばそうではなく、故に子供達はトラブルに巻き込まれる。
日本人の父娘は娘が聾唖者であるため言葉が通じていない。しかし、過去に父娘を襲った悲劇により、父親は娘に表面的に気を遣っているようであるが、心の底から通じ合えているようには見えない。
モロッコ人兄弟も他愛のない兄弟げんかを繰り返すものの仲良しのように見えるが、愚直な兄と小器用な弟の間には、妬みと蔑みが見て取れる。本当の心は通じ合っていない。

旧約聖書は「言葉が通じないという状態から生じる混乱」を伝えているのだろう。
(宗教的解釈が間違っていたらご指摘ください)。
しかし、実は「言葉ではなく、(媒介としていた言葉の共通性を失うことが原因ではあるが)心が通じない。コミュニケーションが成立しなくなるという悲劇」を伝えているのではないか。

ここで「コミュニケーション」の話に戻ろう。
コミュニケーション(communication)」の語源は、ラテン語の「共通したもの」を表す(コミュニス:communis)や、「共有物」を表す(コモン:common)にあるという説が有力だ。

つまり、コミュニケーションとは、会話をすること(言葉が通じること)ではない。それは過程である。コミュニケーションは相互の”共有”がなされなければならないのである。

この「バベル」という映画に登場する人々は、裕福そうな米国人家族と日本人家族。貧しそうなモロッコ人家族とメキシコ人の仲間達。国や貧富は様々だが、一様に空虚な心のすれ違いが寒々しさとして伝わってくる。
「言葉面が通じていても、心は通じていない。思いが共有できているというような”本当のコミュニケーション”なんて誰もとれていないんだよ」という、この映画のタイトルから逆説的なメッセージが感じ取れる。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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