自動化の合理性

2014.12.11

経営・マネジメント

自動化の合理性

野町 直弘
調達購買コンサルタント

今までの日本では「自動化、機械化することが合理的である」という真理が大きな疑問なく受け入れられてきました。しかしそれを変えていかなけれなならない状況になってきているのです。

KTXの事例を読んで思い出した過去の経験が二つあります。一つ目は日産自動車の座間工場を見学した時のことです。その当時ある自動車メーカーの企画部門に勤務していたのですが、たまたま工場見学する機会がありました。その当時の日産座間工場はとても最先端の工場として有名であり、1986年にはチャールズ皇太子とダイアナ妃が工場見学にご訪問する程でした。この工場の素晴らしいところは徹底的な自動化がなされている点です。特に車体組立て(溶接)ラインは殆どラインに人がいず、徹底的に自動化されていたように記憶しています。当時私が日頃見ていた自社および自社関連の自動車工場とは全く違うことに驚きが隠せなかったことを鮮明に思い出すことができます。
ご存知のように座間工場はその後1995年に閉鎖され今は座間事業所として型・治工具・設備・電子機器の生産設計開発及び製造、電気自動車のリチウムイオンバッテリーの開発・生産を行っています。工場閉鎖の理由は様々であり、一概には言い切れませんが、必ずしも自動化=合理性ではなかったことが類推されます。特に自動車はその当時どのメーカーも車種を増やし結果的に少品種多量生産から多品種少量生産化しており、そういう点からも自動化よりも生産柔軟性が求められたとも思われます。

もう一つの経験は私が自動車会社の購買にいた時の話です。当時最量産車種向けのある部品は2社発注となっていました。これは1社だけでは生産能力が不足していたこともありますが、2社競合させることで競争状況を作るということを目的としていたのです。この2社は本当に対照的な2社でした。同じ部品なのに全く作り方が異なります。1社は工場に殆ど作業員がいません。殆どの作業が自動化されているからです。その工程は実に見事で見ていてもその自動化の工夫にはとても驚かされます。もう1社は10人以上の若い女性が寄ってたかって作業を。しかし驚くべきは、完全自動化している工場よりも多くの人手作業を採用しているメーカーの方が低コストだったということです。正に自動化が必ずしも合理的でないという実例。

このようなケースは今後も起こり得ることです。特に事業活動、生産、調達活動がよりグローバル化している時代ですから、自動化するよりも海外も含む低賃金の労働力を活用した方がメリットがある、ということは当然起こり得ることだからです。最近は情報技術を活用しても導入のための投資がかかり過ぎるのでオフショアアウトソーシングを活用する方が合理性があるという場面もでてきています。
いずれにしてもどのような自動化を行うのか、行わないのかは人件費のレベルや高騰の状況、為替の動向、技術革新などの様々な要因でその時々に最善な意思決定を行うことが求められています。
このような意思決定時には冒頭で述べたような改札自体を廃止してしまう、というような事業や製造などのやり方自体を変えるような発想が重要です。単に自動化・機械化・情報化を進めるのではなくやり方自体を変えその上で合理性のある自動化・機械化・情報化を進めていくことが今後益々求められていくでしょう。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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