調達購買を巡る昨今の動向

2014.04.03

経営・マネジメント

調達購買を巡る昨今の動向

野町 直弘
調達購買コンサルタント

昨今の調達購買に関する興味深い動向について考察を述べます。

詳細は是非記事を読んでいただきたいのですが、まずはこの製造業の再定義が進んだ理由として筆者は以下の点を上げています。1.インターネットの普及による社外との取引コスト低下が爆発的に進んだこと。2.(特に米国企業では)ROAやROEを上げ株主価値を最大化する圧力が強く、自社工場や設備をEMSに売却するもしくは設備投資をしない方が効率的な経営とみなされること。3.従来であれば自社のためだけの工場であったものが顧客が分散化することでコスト削減につながったこと、という点を上げています。
一方で何故日本ではこの動きが活性化しなかったという理由がとても興味深いものものです。筆者が上げている理由としては1.元々日本企業では製造受託する企業はOEMと呼ばれ「下請け」とみなされてきた。OEMの発展形とも言えるEMSについても日本企業は「下請け」のイメージを持ち続けたことで「ものづくり」が得意なはずの日本にEMSとなろうとする企業が現れなかった。2.資産圧縮の動機は日本企業にはなく特に20世紀型の日本経営では設備投資の原資は銀行からの借り入れ(所謂メーンバンク制)であったため、資産(特に土地)を売却するなど、担保がなくなってしまう等あり得なかった。3.ハードウエア製造を社内に持ち続けることで国内雇用を維持する必要があった。などの点を筆者は上げています。

私はこの業界出身でもありませんし、専門家でもないので筆者の言っていることが正しいかどうか判断できません。しかし、すくなくとも3.の雇用維持に関しては現在多くの日本企業が海外に生産拠点を移転していることは事実です。また結果としてAppleや鴻海のような(成功?した)企業がないことも事実です。

それ以上にこのような水平分業が日本で活性化しなかった理由をに共通しているのが「日本的な社会構造や企業文化」であることがとても興味深いことなのです。
このような製造業の再定義とまで言える構造改革を従来なら「ものづくり」が得意であった日本企業が「下請け」というイメージやメーンバンク制、終身雇用などの所謂「日本的なもの」で制約を受け、結果的に国際的競争力を損なってしまう結果につながったということなのです。

今後国際的な競争力の強化のためには設計と製造の分業は進展していく方向
でしょう。そのためにはより一層調達・購買の機能は重視される方向になります。

またそれだけでなく、アップルの記事に見られるような短期的な収益だけでない
(コスト削減だけでなく)環境や人権などのCSRへの取組みの強化、ソニーの記事に見られるようなサプライヤとの関係性作りとそれによる製品力の強化、これらの動向を国際的な動向と捉え、「日本的なもの」などの既成概念などを制約とせずに競争力強化を行っていく、このことの必要性を改めて感じる機会となりました。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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