タクシー値上げは誰のせい?:フレームワークで読み解く!

2007.12.04

仕事術

タクシー値上げは誰のせい?:フレームワークで読み解く!

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

12月1日から東京都のタクシー運賃がついに初乗り710円に値上げされた。距離追加料金も80円から90円へ。深夜割増し時間も前倒し。小型車区分も廃止と、かなりの値上がり感だ。 乗務員の給与引き上げと燃料費高騰への対応との理由だが・・・。

こうしたマクロ環境を読み解くにはPEST(ペスト)分析がポピュラーなフレームワークだ。

・Political:政治的規制事項の影響要因はどうなっているのか?   
・Economical:経済環境はどのような影響を及ぼしているのか?
・Social:社会環境はどのような影響を及ぼしているのか?
・Technical:影響要因となるような技術的変化・革新等の要素はあるか?

PEST分析は以上の5つの切り口で客観的に環境分析を行う手法である。

まず、「Political」。一番大きいのはこの要素であることは誰の目にも明らかだ。
一連の規制緩和の波に乗り、道路運送法改正法案が2002年2月1日から施行された。
これによって、新規参入や増車は今までの免許制、認可制から、車庫の確保など一定の条件さえ満たされれば自由にできるようになり、タクシーの供給過剰がおこった。

次に「Economical」。上記の緩和策も、バブルの頃のように六本木交差点で空車を探して彷徨するような状況なら増車も歓迎だが、2002年当時はデフレ不況のまっただ中。企業はタクシーチケットを絞り、個人も呑んでも終電には間に合わせるといった変化があった。
当時の政府や運輸省は、「(規制を緩和すれば、)サービスが多様になり、タクシーの利用が促進される」としていたが、市場や経済環境を無視していたとしか思えない。

「Social」も悪いことに先の二項目と呼応してしまっている。当時の社会情勢で顕著なのは不況のため5.4%にも上昇していた完全失業率だ。タクシー会社の新規採用・増車は失業者の受け皿となり、増車傾向に拍車をかけることになった。

「Technical」も呼応している。カーナビやGPSの普及である。初心者ドライバーでも、カーナビ装備で道がわからない不安を解消できる。GPSによる効率的な運行・配車で乗務環境も万全という募集文句が散見された。

しかし、どれぐらい車と乗務員を増やしても、そもそも需要と供給のバランスが完全に崩れているのだ。
市場や経済状況を考慮せずに、機械的な「規制緩和」を行った政府。
恐らくは市場や経済状況はわかっていただろうが、「とりあえず増車をして、あとは運転手任せ」にした、タクシー事業者。
両者の責任は大きくはないだろうか。

確かに、昨年度、都内のタクシー乗務員の年収は平均327万円という。
低賃金を補うための長時間・過労運転が起こり、安全を確保できていないという悪循環がよくわかる。
しかし、乗務員からは「値上げによって利用者の乗り控えが起きてはノルマがクリアできない」という声も大きい。
また、「ノルマや様々な給与体系の仕組みがあるため、値上げによって乗務員の給与も上がるが、会社の方が儲かる」という乗務員の声も上がっている。

かつては「庶民の足」と言われたタクシーがどんどん利用しづらくなっていく。
また、乗務員のためという理由も全面的には得心がいかない。
ニュースの理由を冷静に分析してみると、また新たな納得のいかない部分が見えてきてしまうのであった。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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