PEST分析から読む近未来vol.1

2015.07.13

営業・マーケティング

PEST分析から読む近未来vol.1

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

PEST分析といえば、マーケティングのイロハのイ。これをやらずに戦略など考えられるはずもない。そこで、PEST分析の基本的な取り組み方から説き起こし、事例を元にその使い方を一緒に考えてみよう。

道交法改正がもたらしたピンチとチャンス

2007年9月に道路交通法が改正され、飲酒運転に対する取り締まりと罰則が一気に強化された。そのキッカケとなったのは、飲酒運転により引き起こされた悲惨な交通事故である。警察の威信を賭けた法改正だけに、改正直後の取り締まりは極めて厳しいものとなった。

ロードサイドの飲食店やゴルフ場などが軒並み取り締まりの重点対象となり、ゴルフ場の出口などで飲酒運転の検問が行われることもあった。ある意味、見せしめ的な取り締まりであり、仮にドライバーが飲酒運転と判断されれば、同乗者にも高額の罰金が科せられた。

その結果、ロードサイドの飲食店ではアルコール関連の売上が急落する。ゴルフコンペでも終了後の乾杯はご法度となる。食事の質よりもアルコール類を安価で提供することで成り立っていた、ロードサイドの飲食店などは、店をたたむケースもあった。

一方で、法改正は新たなビジネスチャンスをもたらした。運転代行サービスである。車以外の交通手段に恵まれない地方では、ちょっと食事に行くにも車が欠かせない。晩ごはんともなれば、飲みたくなるのが心情。とはいえ飲むと何十万円もの罰金が恐ろしい。

そこで「安心してお飲みください。乗って来られた車は、ご自宅まで代わりに運転して送り届けます」サービスが広まる。運転代行サービスは以前からあったものの、わざわざお金を払って頼む人は少数派だった。ところが罰金が高額化したおかげで、このサービスのコスト・パフォーマンスが俄然高まったのだ。


PESTのPはPoliticsのP

こうした一連の現象は、法律が改正されて初めて起ったことではある。けれども、法改正は何も、ある日突然行われるわけではない。そもそも法律ができる前に、何らかの問題提起がある。これを受けて、改正の動きが起こるのだ。

一連の動きは、決して秘密裡に進められるわけではない。特定の課題に関する検討委員会や審議会が立ち上げられ、そこに有識者が集められて議論が交わされる。議事録が作られ、関係省庁のホームページで公開される。

マスコミがすべてを取り上げることはないけれども、自分の業種・業態に係る省庁のサイトを定期的に見ていれば、その動きを掴むことはそれほど難しいことではない。これは、大企業のマーケティング部門の基本業務である。

法に絡む変化は、ビジネス環境にダイレクトに影響を及ぼす。だから、しっかり分析することが必要だ。とはいえ「分析」といっても難解なことをするわけではない。「分析」とは「ものごとを一つ一つの要素に分け、それぞれの性質を明らかにすること(角川必携国語辞典)」である。

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