これからの調達のあり方
-本当のグローバル競争のはじまり-

2013.04.05

経営・マネジメント

これからの調達のあり方 -本当のグローバル競争のはじまり-

野町 直弘
株式会社クニエ プリンシパル

前回は政府のシステム調達の失敗について述べました。 今回はこういう問題が起きるもう一つの原因について述べます。

前回は政府のシステム調達の失敗について「元々比較できないような難易度が高い仕事を無理やり比較しようとするから問題が起きてしまう。」そこで欠けているのは「サプライヤの得意分野を見極め、場合によっては育成していくという『サプライヤマネジメント』という考え方だ。」と述べました。
今回はこういう問題が起きるもう一つの原因について述べます。それは「そもそも比較できないようなモノ」を買う状況になっていること自体が問題だ、ということです。

前回のメルマガに若手気鋭バイヤーで自身IT調達の専門家である沢渡あまねさんからこういうご意見をいただきました。「そもそも要求仕様が『ガラパゴス』である時点で、競争入札に向かないのにむりやり複数のサプライヤーを募る。→受注したサプライヤーが『ガラパゴス』な要件に振り回されて、デスマーチ~疲弊~ノイローゼ(受注しなかったサプライヤーも、提案段階で疲弊&時間ロス)という『無茶』『無理』『無駄』がうまれています。国内でつぶしあっている場合ではないのに…と本当に思います。『ガラパゴス』により、国内の企業や人材が疲弊してゆく…なんとかしなくては!」
その通りです。
そもそも「ガラパゴス」を買おうとするから比較もできないのです。民間企業は90年代より(一応)基幹システムをERP化していきました。この目的の一つが業務及びシステム導入および運用の標準化です。つまり「普通のモノ」を買いましょう、ということなのです。

私はこの「普通のモノ」を買うというのは2012年に出てきたグローバル競争下での重要なキーワードではないか、と考えます。
例えば新興国市場での地産地消をコンセプトとする日本製造業には「日本ガラパゴス品質基準」ではない「グローバルでの普通品質基準」を求められ始めています。一度上げた品質を落したモノを作ったり買ったりすることは製造部門やバイヤーにとっては物凄い高いリスクです。会社全体の仕組みが整っていない限り何かトラブルが起きた時には全ての責任を転嫁されるからです。

先日アップルがiPadにシャープ製のIGZOを採用しているという記事が出ていました。しかしアップルはIGZOの解像度をわざと落としているとのことです。驚くべきことです。シャープが自信を持って「オンリーワン技術」と言っているのに対してアップルはわざわざその性能を落として採用しているのです。何故なら彼らは「ガラパゴス」ではなく「普通のモノ」が欲しいのです。アップルは重要な部品は基本デュアルソース化していると言われます。これは圧倒的な購入ボリュームを背景に供給リスクヘッジと競争環境を保持するためです。彼らはオンリーワンの「いいモノ」よりも「普通のモノ」が必要なのです。
私はこの動向は部品や構成品の世界の話だけでなく、多くの新興市場での製品ニーズや製品作りに共通することであり、これから先の調達・購買のあり方(や大袈裟に言うと日本企業の競争力そのもの)を大きく左右する動きではないかと考えます。

従来の調達・購買に求められた「いいモノ」を「より安く」買う能力ではなく「普通のモノ」を探し出し、それを自社製品に採用させる能力が求められるようになってきているのです。とてもエポックメーキングなことです。

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野町 直弘

株式会社クニエ プリンシパル

NTTデータグループのコンサルティング会社である株式会社クニエの調達購買改革コンサルタント。 調達・購買分野に特化したコンサルティングを提供している株式会社アジルアソシエイツの元代表。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルがサービス提供を行います。

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