お客様の「コントロール感」を奪ってはいけない!

2012.07.25

営業・マーケティング

お客様の「コントロール感」を奪ってはいけない!

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

販売や交渉などにおいて、こちらの要求(商品を購入してほしい、当方の条件を認めてほしい等)を相手に‘心地よく’受け入れてもらいたいなら、言い換えると、上手に説得したいなら、ぜひとも覚えておくべき点がひとつあります。

それは、相手の「コントロール感」を奪ってはいけないということです。

コントロール感とは、端的には、

「自分の判断でものごとを決めたい」

という欲求のこと。人は誰しも、多かれ少なかれこの「コントロール感」
を持っています。したがって、相手に選択の余地を与えなかったり、強制的な物言いをしてしまうと、

「心理的な抵抗(リアクタンス)」

が生まれ、要求が受け入れられなくなります。

さて、この「相手のコントロール感を奪ってはいけない」という「説得における基本中の基本原則」は、サービスの現場においても重要です。

大阪ガス行動観察研究所が、某レストランチェーンのホールでの、接客スタッフの様子を‘行動観察’し、「優秀店」と「標準店(平均的な店)」との違いを確認したところ、さまざまな違いが発見されたのですが、その中には、「コントロール感」に関する違いもあったのです。

客のテーブルに空になったお皿が残っている時、

「お下げしてもよろしいでしょうか?」

と聴き、それに対してお客さまがうなずくなど、ちゃんと相手の「許可」が得られたことを確認してから下げるのが優秀店です。

ところが、標準店のホール係の場合、

「お下げしてもよろしいでしょうか?」

と言い終らないうちに、皿に手がかかっていることがあるのだそうです。つまり、実際には客の許可を得る前に強制的に皿をさげてしまう。

どうせ空の皿ですから、どちらにせよ下げられても問題はないはず。

それでも、自分が許可を与える前に勝手に下げられてしまうと、心がわさわさしてしまうわけです。というのも、「コントロール感」を奪われたからなんですね。

上記の例は、たいしたことではない違いに感じられるかもしれません。しかし、こうした細かい気配りの有無が、愛され、リピートされる店になるかどうかの分かれ目になっているのです。

あなたも、様々な状況における、お客様とのコミュニケーションにおいて、
相手の「コントロール感」をうっかり奪ってしまっていないか、検証してみたらどうでしょうか?

それにしても、まだビール一口分くらい残ってるのに、新しいビールと交換に
黙って持っていってしまう店ありますよね。しかも、「まだ残ってます」などとは、「セコイ!」と思われるようで言いにくいので二重に不愉快です。

そんなお店には私は二度と行きません(笑)

<関連ブログ記事>

影響力を解剖する(11)コントロール感-1

<参考文献>

『ビジネスマンのための「行動観察」入門』
(松波晴人著、講談社現代新書)

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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