風評被害を生み出さないために心がけるべきこと

2012.07.24

ライフ・ソーシャル

風評被害を生み出さないために心がけるべきこと

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

今回は、風評被害等は 「誤まった因果関係」 から生み出されているという話です。

「ワクチンと自閉症に因果関係がある」

と言い切るのは、あきらかに間違っていることは言うまでもないでしょう。

実際、数千~数万人の子供たちを対象とした疫学調査では、ワクチンと自閉症との間にはなんら関係は見出されなかったのです。

こうした因果関係が広く信じられてしまった背景には、ウェークフィールド博士という「権威」が発信した情報ということもあるかと思います。

そして、この誤った因果関係のためにワクチン接種を拒否する親が増え、その結果、はしかなどに罹ってしまう子供たちが増加する事態を招いてしまったのです。

日本でも同じような話がたくさんありますね。

つい最近もネットで拡散されている話として、

「フクシマを食べて応援と言っていた女性が脳障害になり大変な事態に・・・」

というものがあります。

昨年の夏から福島産の食べものを積極的に買って食べていた77歳の女性の脳に障害が見つかり、「痴呆症」と断定された、という内容です。

つまり、

「放射能のせいで脳障害が起きた」

という因果関係をこの話では示しているのです。

実際に、そうなのかもしれません。
しかし、そうでない可能性も高い。

高齢者ですから、なにもしなくても、痴呆症というか「認知症」になる確率は高いわけです。つまり、彼女は、フクシマを食べようが食べまいが、認知症になっていたかもしれないわけです。

彼女が福島産の食品を食べたこと、そして認知症になったことはそれぞれ「事実」、しかし、この間に因果関係があるということは、現時点では単なる

「仮説」(検証される前の「仮の説」)

に過ぎない。

これが事実かどうかは検証を待たなければならないのです。
決して、断定できることではない。

問題は、こうした具体的なできごとが、厳密な統計分析に基づく科学的な研究論文よりも、はるかに高い説得力を持つことです。一般化された話よりも、具体的なひとつの事例のほうが私たちの感情を揺さぶるからですね。

ですから、

・上記のような話は単なる「仮説」であると冷静に受け取ることができる人

・そして、もちろん用心にこしたことはないが、いたずらに風評被害等を生み出すことになるから、無条件に信じてしまうのはやめておこうと考えられる人

は決して多くないのではないでしょうか?

私たちは、風評被害等を起こさないため、

「人には、因果関係をやたらと見つけたいという欲求がある」

ことを理解し、そしてまた「科学的思考法」を学んで、

「誤まった因果関係」

を自ら生み出さない、むやみに信じないという姿勢を身につけなければなりません。

ワクチンの事例の出所:

『錯覚の科学』
(クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズ著、
 木村博江訳、文芸春秋)

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松尾 順

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これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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