「成果主義」の時代を生きるために

2012.06.28

仕事術

「成果主義」の時代を生きるために

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ますます短期的な成果が求められるビジネス現場にあって、「結果を出すこと」と「プロセスをつくること」のどちらが大事か?───は、とても悩ましげな問題です。このテーマを深く考えることは、結局、「働くとは何か?」「仕事の幸福とは何か?」につながっていきます。

◆「結果・成功」は一時的な興奮vs「プロセス・意味」は継続的な快活
 有名プロスポーツ選手に限らず、人生の後半からほんとうの自分らしさを手に入れている人たちを観察して、私があらためて思うのは次のようなことです。

 ○働くことの成熟化に伴って、「結果・成功」志向は弱まっていき、「プロセス・意味」志向になる。これは個人にも組織にも当てはまる。

 ○つまり、「結果・成功」を手にするよりも、「意味」のもとに自分が生きている/生かされている「プロセス」に、より確かな喜びを感じるようになる。

 ○「結果・成功」は高揚や興奮を与える。しかし一時的である。「プロセス・意味」は人を快活に・辛抱強くさせる。それは持続的である。

 ○「プロセスを楽しむこと・意味を見出し満たすこと」がキャリアや人生の目的になる。「結果・成功」はそのための手段となる。「結果を出さねばならない・成功しなければならない」が目的化すると、よからぬ回路にはまり込む。

 このあたりのことを、賢人たちの言葉から補っておきたいと思います。

  「人間の値打ちとは、外部から成功者と呼ばれるか呼ばれないかには関係ないものです。むしろ、成功者などと呼ばれない方が、どれだけ本当に人生の成功への近道であるかわかりません。だれが釈迦やキリストを成功者だとか、不成功者だとかという呼び方で評価するでしょうか。現代でも、たとえばガンジーやシュバイツァーを成功者とか、失敗者とかいういい方で評価するでしょうか。世俗的な成功の夢に疑惑をもつ人でなければ、本当に人類のために役立つ人にはなれないと思います」。 ───大原総一郎(『大原総一郎~へこたれない理想主義者』井上太郎著より) 

  「ずっと若い頃の私は百日の労苦は一日の成功のためにあるという考えに傾いていた。近年の私の考えかたは、年とともにそれと反対の方向に傾いてきた」「無駄に終わってしまったように見える努力のくりかえしのほうが、たまにしか訪れない決定的瞬間よりずっと深い大きな意味を持つ場合があるのではないか」。 ───湯川秀樹(『目に見えないもの』講談社学術文庫あとがきより)

 このお二人の無私で透明感のある言葉を、私はようやく咀嚼できるようになってきました。とはいえ、次のメッセージも決して忘れてはならないものです。

 「勝ち負けは関係ないという人は、たぶん負けたのだろう」。 ───マルチナ・ナブラチロワ(テニスプレイヤー)

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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